正社員美容師として働く人はおそらく美容室側が社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険)に加入していることだと思います。
では、業務委託サロンやシェアサロンに移籍する場合はどうなるのか?会社員ではなくなり個人事業主になりますので、これまで加入していた健康保険や厚生年金から外れ、国民健康保険と国民年金に加入することになります。
と、言われてもどのような違いがあるのか分からない人も多いと思いますので、出来るだけ分かりやすく個人事業主の社会保険制度について解説したいと思います。
そもそも会社員の社会保険ってなに?税金なの?
会社員(今回の場合は雇用される美容師ですね)が加入する社会保険とは、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「労災保険」の総称であり、一般的な企業であれば加入が義務付けされてますので「実質的な税金」と言われたりしますが、厳密には税金ではない。という点を認識しておきましょう。
その上で、若い世代の多い美容師に特に影響があるのが「健康保険」と「厚生年金保険」になるでしょう。
*介護保険は40歳になった月から加入することになりますので今回の説明では割愛させて頂きます。
*労災保険は通勤時や勤務中に起きた病気や怪我に対して保険料が支給される制度ですので詳しい説明は割愛させて頂きます。
それぞれ、どのような制度なのか?細かく説明をしてしまうと非常に複雑になりますので、ここでは保険の内容について簡潔にお伝えをしたいと思います。
健康保険 | 6歳以上70歳未満の人は、所得に関係なく医療費の自己負担割合が3割になる保険制度 |
厚生年金保険 | 将来、厚生年金として年金が受け取れる。厚生年金保険料は所得によって31段階に分かれており所得が高い方が負担額が大きい |
上記の通り、健康保険、厚生年金保険は日々の生活を守るためにとても重要な役割を果たしていると言えます。
社会保険料は労使折半
では、この社会保険料は誰が支払っているのか?半分は会社が払っている。という話を聞いたことがある人も多いと思いますが、その通りです。
会社員の社会保険料は労使折半という考えのもと、半分は会社、もう半分は従業員が支払っていることになります。そのため、ご自身の給与明細をご確認頂ければ毎月いくらの保険料を支払っているか確認できるでしょう。
そして、実際に国に支払っている保険料は給与明細に記載されている金額の倍であると理解すると良いと言えます。
こんな美容室は要注意!今すぐ退職を考えるべき
従業員の保険料を半額負担する。ということはサロン運営においても結構な負担になります。実際、美容室の社会保険加入率は10%以下である。という話もよく聞きます。
本来、法人の美容室で従業員を雇用している場合は、社会保険に加入することが義務です。また、オーナーが個人事業主の場合でも従業員が5人以上であれば社会保険に加入する必要があります。
もし、社会保険に加入出来ていない場合は非常に危うい状態と言えますので今すぐ退職を検討するべきでしょう。何も個人事業主になりなさい。という話ではなく、しっかりと社会保険に加入している健全な美容室に転職するだけです。
ちなみに、社会保険に加入しなければ手取りが増えるよ!良いでしょ!的な説明をしているオーナーがいるならば完全ブラックですし、それを真に受けてラッキー。と思う美容師はお先真っ暗なので十分に気を付けてくださいね。
シェアサロンなど個人事業主になると社会保険はどうなるのか?
会社員の時は、「健康保険」と「厚生年金保険」に加入をしておりますが、当然、シェアサロンや業務委託サロンで勤務する場合は会社員ではなく個人事業主になりますので、上記の保険に加入することは出来ません。
では、どのような社会保険に加入するのか?
ご存知の方も多いと思いますが、「国民健康保険」と「国民年金保険」になります。こちらも、簡単に保険制度について説明をしたいと思います。
国民健康保険 | 6歳以上70歳未満の人は、医療費の自己負担割合が3割になる保険制度。保険料は所得によって変動する。年収500万円の場合はおおよそ3万円/月程度。 |
国民年金保険 | 将来、国民年金として年金が受け取れる。国民年金保険料は毎年改定されるが平成31年3月までは月額16,340円となる。 |
上記のように、仮に年収500万円のフリーランス美容師(個人事業主)の場合は、毎月4.5万円ほどの保険料を納付する計算になります。
*労災保険は労働者に対する保険になり個人事業主は原則加入ができません。そのため、業務上、怪我や病気が心配な場合は民間保険に加入すると良いでしょう。とは言え、美容師の場合は、あまり発生しづらい状況とも言えるでしょう。
国民年金と厚生年金では将来受け取れる年金額が大きく違う
正社員サロンで勤務する人の中には、個人事業主になった方が個人負担の社会保険料が安くなる。という人も出てくるかもしれません。むしろ、厚生年金保険料は所得(標準報酬)に対して9.091%も個人負担しているため結構高いのです。
そのため、国民年金だけの方が負担が少なくてお得なの?と思ってしまうことでしょう。
実は、ここには明確な理由があり、国民年金の将来受け取れる年金の平均受給額は5.4万円なのに対して、厚生年金の平均受給額は14.7万円にもなります。65歳以降の収入が実に3倍近くも異なるのです。
この差は非常に大きいと思いませんか?無論、現在の少子高齢化の状況を考えると、確実に上記の年金支給額よりもかなり下がった金額にはなってしまうと思います。
また、年金の支給開始年齢も現在の65歳から引き上げされる可能性も高いでしょう。
従って、あくまで2020年現在だけを抜き取って考えるならば圧倒的に厚生年金の方が良いと言えますが、将来どうなるのか?という点を踏まえるならば、年金保険料を最小にしてiDeCoなどに投資した方がお得である。との見方もできます。
個人事業主は節税こそが最大のメリット
正社員美容師の場合、給料から諸々徴収され手取額が支給されるので面倒な手続きなどがなく分かりやすい。という利点もありますが、イコール節税できる幅が限られている。と言えます。
一方、シェアサロンの場合は、薬剤等の消耗品・ハサミなどの道具・サロンまでの交通費・集客に必要だった費用などなど全て経費計上が可能になります。
大きな声では言えませんが、美容師同士の飲み会。さらに言えば友達との飲み会とか旅行とかも、打ち合わせ費用や視察費用として経費計上出来てしまう場合があるのです。
こんなこと、正社員サロンでは絶対に許されませんよね。個人事業主の特権だと言えますし、いかにして経費にするか?は、美容師に限らず世の個人事業主全員が考えていることだと言えます。
もちろん、経費というのは業務に必要な支出に限られていますので、プライベートな飲み会費用など経費できる訳ないのですが、、、個人事業主で働く人たちがどうしているのか?知り合いなどに聞いて見ると良いかもしれませんね。
確定申告は忘れずべからず
会社員美容師の時は、サロン側が年末調整をしてくれるので確定申告をしたことがない。という人も多いのではないでしょうか。
そのため、そもそも確定申告が何か分からない。という人に向けて非常に簡単に説明すると、「所得に掛かる税金の金額を計算し納税するための手続き」が確定申告になります。
ここで言っている税金とは、主に「所得税」と「住民税」なのですが、累進課税であるため、所得が高いほど納める税金も高くなるという構図です。
つまり、所得を下げることで納める税額を低くすることが出来るのですが、そこで必要になるのが「経費」です。年間売上から経費を引いた金額がざっくり所得になりますので、経費が多ければその分だけ所得が下がるのです。
要は、いかに経費に回せるのか?という点が節税の最大のポイントになる。という訳です。その際、必ず領収書が必要になりますので、小さな金額でも必ず領収書を貰いに何に使ったのか領収書の裏面に記載するようにしましょう。
まとめ
正社員美容師からシェアサロンへ移籍する場合の社会保険について解説をさせていただきました。
正社員の場合、上記のような保障制度について極端な話、全く知らなくても生活をすることができます。しかしながら、知らないばかりに損をしてしまうことも非常に多いことから、この機会に勉強するのも良いことでしょう。
その他、年金制度1つとっても65歳未満で被保険者が障害者になった場合に支給される「障害年金」や死亡した場合に支給される「遺族年金」など様々な制度がありますので、少しずつお調べ頂ければ幸いです。