「将来は子どもがほしいけれど、子育てしながら美容師を続けられるの?」「フリーランスでの出産はお金や働き方が不安…」そんな悩みを抱えている美容師の方も多いのではないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、フリーランス美容師として独立し、現在4年目を迎えるSALOWIN銀座VORT店の山本麻美さん。2025年2月に第一子を出産し、わずか2か月でサロンワークに復帰。育児と仕事を両立しながら活躍されています。
インタビューでは、妊娠・出産にまつわる不安や準備、復帰後の働き方の工夫、そしてフリーランスならではの魅力について語っていただきました。
ライフステージの変化に悩む美容師の方にとって、希望と勇気をもらえるインタビューです。
女性フリーランス美容師が妊娠初期に抱えた不安と産休への備えとは?
―山本さんは美容師になって15年目の今年、お子さんを出産されたのですよね。最初に妊娠がわかったとき、不安だったことはありますか?
山本:一番不安だったのは、休まなくてはいけないことですね。どれくらい産休・育休を取るか、休んだあとにお客様が戻ってきてくれるかどうか……。
さらに、もし切迫早産などで長期入院となったらどうしようと、想像するだけで怖かったです。
出産後も日曜日は保育園がお休みなので、その対策も含めて不安は尽きませんでした。
―妊娠がわかって、すぐに取り組んだことはありましたか?
山本:まず夫と休みの期間について話し合い、産休に入る時期と復帰の時期を早めに決めました。その上で安定期に入った段階でお客様に詳細をお伝えし、復帰時期までしっかりお約束をしましたね。
―実際にどのくらいお休みされたのですか?
山本:実は出産日の5日前まで働いていたので、お休みしたのは2か月弱くらいですね。
休みの間は、同じ店舗のフリーランス美容師さんや前職の後輩にお願いして対応してもらいました。妊娠中から同じ店舗の美容師さんには「何かあったらお願いします!」と伝えていて、みなさんが気遣ってくれていたので心強かったですね。
でも思っていた以上に、多くのお客様が他のサロンに行かずに復帰を待ってくださっていて嬉しかったです。
女性フリーランス美容師が妊娠中も体調を管理しながら無理なく働く工夫とは?
―妊娠中、つわりで働けなくなることはありませんでしたか?薬剤やシャンプーの匂いで気分が悪くなってしまう方もいると聞きます。
山本:幸い私は大丈夫でした!
体調も安定していて、むしろ仕事がいい運動になったように思います。
体調が悪くてお客様に予約を変更してもらうようなことも一度もなく、問題なく働けました。
―妊娠中は営業時間を変更したりしましたか?
山本:予定日の1か月前までは通常どおり、9時から19時まで働いていました。最後の数週間は1日1人に絞って調整していましたね。
―すごいですね。健康でいるために意識していることはありますか?
山本:やはり食事と運動が大切だと思います。フリーランス美容師になってから風邪を引かないように、食事はずっと気をつけてはいたのですが、妊娠してからはなるべく揚げ物を控えたり、さらに意識するようになりました。
病院の先生の指導もあって太りすぎないように管理して、妊娠中もジムに週2回通っていました。ジムで妊婦なのは私だけだったので少し浮いていましたけどね(笑)
でもそのくらい普通に過ごしていた方が元気でいられる気がします。あまり意識しすぎると気が滅入ってしまうと思います。

フリーランス美容師が出産前に準備すべきお金と保育園のこと
―出産って実際、どれくらいの費用がかかるものなのでしょうか?
山本:出産費用としては、トータルで約130万円かかりました。国から約50万円の補助が出たので、実費で支払ったのは約70万円です。定期健診は1回6,500円ほど、精密検査があると3万円くらいかかるので、出産までに10万円くらい使いました。
会社員だと産休・育休中の手当があるところもありますが、フリーランス美容師の場合、自分でしっかりお金を貯めておく必要があります。加入している美容国保から出産手当金は支給されましたが、それ以外の補償はないです。
出産後にベビー用品もそろえないといけないので、100万円くらいは用意しておくと安心かもしれません。
でも、今後は出産費用が無償化される予定なので、もう少し負担は減りますね。うらやましいです(笑)
―貯金や金銭面での不安はありませんでしたか?
山本:フリーランス美容師になってからは還元率がよくなったので手取り額が増えました。計画的に貯金もできていたので大きな不安はなかったです。出産の直前まで働けたのも大きかったですね。
―産後すぐに復帰するためには、保育園探しも大変だったのではないでしょうか?
山本:生後57日から預けられる保育園を厳選して探しました。探すのはすごく大変だったのですが、タイミングよく自宅の近くの園に入れられてラッキーでした。
保育園は認可と認可外があるのですが、認可外の園は経営していかないといけないきちんとしたビジネスなので、先生の数も多く、サービスが手厚い傾向にあります。なので、あえて認可外の保育園を選びました。熱が出たときも「迎えに来られるタイミングで来てください」と臨機応変に対応してもらえるのですごく助かっています。
やはり認可保育園が人気だと思うのですが、美容師さんのようになるべく早く復帰してお仕事されたい方には、認可外の保育園も選択肢としておすすめしたいです。
子育てと両立できるフリーランス美容師の“柔軟な働き方”とは?
―復帰後の営業時間はどうされていますか?
山本:今は9時〜18時までの営業で、仕事が終わったら保育園に子どもをお迎えに行っています。
お客様の予約が入っていない時間帯は、自由に予定を調整できるので、子どもとの時間を確保しやすいのがいいですね。夕方から予約が入っていなければ早めに切り上げて、子どもと過ごすこともあります。
―お客様の理解も大きいのでしょうか。
山本:会社員のときには子どもがいなかったので比較しづらいですが、マンツーマンでお客様との距離が近い分、より深く理解してもらえているなと思います。
先日カット中に保育園からの電話がかかってきて、ちょうど携帯の画面がお客様の目に入ってしまいました。そしたらお客様が「私は途中でもいいからお迎え行ってあげて!」と言ってくださいました。
さすがにカットの途中で放り出すわけにはいかないので、「仕上げさせてください!」と最後までやらせてもらいました。(笑)
優しいお客様たちと理解のある保育園の方々には感謝です。
―お客様お優しいですね。
山本:女性のお客様がほとんどで働く同世代の方が多いので、理解してくださる方も多くてありがたいです。
子どもがいないお客様もいらっしゃるので、自分から積極的にプライベートの話はしていなかったのですが、意外とお客様の方から子どものことを聞いてくれたり、興味を持ってくれたりするので嬉しいですね。

信頼がすべて。ライフステージが変わっても、美容師を続けるための大切なこと
―SALOWINを利用されている方でフリーランス美容師として、妊娠、出産を経て子育てをされている方はまだ少なく、みなさん漠然と不安を感じています。なので山本さんはすごく素敵なロールモデルだと思います。
山本:そうですよね。
私自身も妊娠がわかった当時、まわりに同じような境遇の人がいなくて、ネットでたくさん検索しました。でもあまり参考になる情報はありませんでした。
「前例がないなら自分でつくるしかない!」と思ったのが原動力でした。
そういうマインドでいたからこそ、あまり枠にとらわれず、自分らしい働き方ができているのかもしれません。
―フリーランスの方や、これからフリーランスになるか迷っている方に向けて、ライフステージが変わっていく中でも美容師を続けるためのアドバイスはありますか?
山本:フリーランス美容師の方は特に、売上をキープすることがすごく大事だと思いました。
私も出産後、小さな子どもを保育園に預けて仕事復帰することに迷いがなかったわけではありません。でも収入が激減してしまったら、自分のケアができず、心にも余裕がなくなってしまっていたと思います。
美容師は人に見られる仕事なので、自分自身の外見や内面の管理を怠らず、お客様をお迎えすることも大切だと思います。そのためにも、ある程度稼げるように環境を整えておくと、選択肢が広がってママになってもハッピーでいられるのかなと思いますね。
―確かに、美容師さん自身がきれいでいることは信頼にもつながりますよね。
山本:はい。結局自分のライフステージの変化は、お客様には関係ないです。
「子育てが大変だから自分のケアが疎かになってしまった」など、共有しようとしてはいけないと思いますし、1人の美容師としてお客様からきちんと信頼を得られるきれいさでいたいなと思っています。
ママになってマイナスでの「なんか変わったね」とは思われたくないですし、余裕がなく視野が狭くなるとお客様との会話にも鮮度がなくなってしまいます。綺麗になるために来られているお客様のためにも、自分のケアや管理は変わらずやっていかないと、お客様は離れていってしまうと思います。
そして、しっかり売上をつくっていくためには、お客様との信頼関係がすごく大事だなと思っています。お客様との信頼関係はすぐに得られるものではないので、まだ若い方や結婚や出産を考えていない方でも、毎日一人一人のお客様を大切に、丁寧に向き合ってほしいです。
そうすればライフステージが変わったとしてもお客様は応援してくれる存在になり、自分らしく働けると思います。
―最後に、今後に不安を感じている女性美容師さんにメッセージをお願いします。
山本:出産や育児に不安を感じる気持ちは、すごくよくわかります。でも、きちんとお客様と信頼関係を築いていれば、いざというときも支えてもらえますし、戻る場所があるという安心感につながります。
仕事が忙しいからと子どもをあきらめる選択をする方もいらっしゃると思います。私もとても不安でしたが、意外となんとかなっています(笑)
仕事も自分の理想も大切にしていけば、両方ちゃんと手に入ると思っています。
SALOWINにもママさんフリーランス美容師が増えていますので、不安な方は相談できるところはたくさんありますよ!
ライフステージの変化を前向きに乗り越えるために
仕事も育児も、どちらも大切にしたい。そんな思いを叶えるヒントが山本さんの言葉には詰まっていました。
ライフステージの変化に迷ったとき、自分らしい働き方を模索する中で、この記事が少しでも背中を押すきっかけになれば嬉しいです。