美容師歴6年目。
会社員としてサロンに勤めた日々を経て、1年前に思い切ってフリーランス美容師という道を選んだSALOWIN銀座六丁目店の亀井大輝さん。
「もっとお客様一人ひとりに向き合いたい」
「技術や薬剤にも妥協せず、自分のこだわりを100%出したい」
会社のメリットを手放してでも、その願望を叶えたい気持ちが強くフリーランス美容師の働き方を選んだそう。
この記事では、実際にフリーランスとして1年間働いて感じたことや、働き方のリアルをご紹介。フリーランスになるか迷っている方、これからフリーランス美容師になるために何をすればいいか不安を感じている方の参考になれば嬉しいです。

お客様の要望に応えるために—フリーランス美容師の働き方を選んだ理由
ー フリーランス美容師の働き方に興味をもったきっかけはありましたか?
亀井:正社員の働き方だと『自分が提供したいサービスが提供できない』と感じたことが大きな理由です。
これまでは複数枠で営業していました。
SNSでの発信に力を入れて集客を強化していました。そのSNSを見て僕のスタイルを気に入って来てくださるお客様が毎日たくさんサロンにきてくれていました。しかし、前社複数枠での営業で、スタッフ全員で全員のお客様を施術するスタイルのサロンワークでした。
ブリーチカラーのお客様が多い中で、僕がベースを作って、被せのカラーも行うということができないと、お客様は不安に感じますよね。
お客様たちからも、僕が多くの施術を担当できないことについて「うーん…」と感じているという声もあり、思うようにできないもどかしさを感じていました。
また、これはしょうがないと思いますが、会社にいると使える薬剤に制限があります。もっと細かい部分までこだわって、100%納得いくスタイルをお届けしたいと思っていました。
僕の提供しているメニューは高価格帯です。高いお金を払ってきてくださっているお客様のために、100%こだわって納得の行く施術を提供するにはどうしたら良いだろう?と考えたところ、マンツーマンで自由に働けるフリーランスの働き方がピッタリなのでは?と思い、挑戦することに決めました。
ー 不安は感じませんでしたか?
やはり会社員から個人事業主になることは不安でした。
何かあったら会社は責任をとってくれるという大きな安心感が会社としてのメリットです。
しかし当時の僕は、会社員であることがデメリットに感じていて、自分の好きな薬剤を使ってお客様ひとりひとりに向き合うことができない環境、そしてお客様の要望に100%の力で答えられない点に、すごくやりきれなさを感じていました。
不安がどうこうよりも、自分を指名してきてくださるお客様のためにはフリーランス美容師になるしかないと思いましたね。
ブリーチカラーを打ち出している身としては、理想の色にならなかった、ダメージしたというトラブルが起きた場合、誰も守ってくれないという点は不安というより怖いところであります。現在はSNS時代なのでそのような1人のトラブルも大きな問題になります。
美容師のみなさんはわかると思いますが、履歴によってはどうすることもできないこともありますよね。なので”履歴によってはお受けできないケースもあります”と予約時、カウンセリング時に必ず伝えています。
”できます”と断言はしないようにしています。
信頼関係の構築にもつながっていますし、フリーランス美容師になってからトラブルにもなっていません。自分を守るのは自分だけなので、できるだけリスクは最小限にした方が良いですね。
フリーランス美容師の働き方で広がる、お客様に寄り添う時間の使い方
ー 働きやすさは変わりましたか?
亀井:僕はほとんど休まず営業しているので、お休みの日数が増えたかというとそうではないです。(笑)
毎日、営業時間10時〜22時で予約をお受けしています。ブリーチカラーのロングメニューのお客様がほとんどなのですが、ロングメニューだからこそ最終受付時間が限られていました。
フリーランス美容師になってからは朝早く来たいお客様、お仕事帰りに来たいお客様のご要望にお応えでき、お客様からもお喜びの声をいただいているので嬉しいです。
先ほどお休みはほとんど取っていないとお伝えしましたが、辛さは感じていませんでした。
急にお休みを頂かなくてはならない時でも、申請などが必要がないので楽ですね。他にもマンツーマンなので放置時間中にご飯を食べる時間もありますし、空き時間でやりたいことに時間を使うことができています。時間の有効活用ができるようになったことが1番大きな変化ですかね。
お休みの日は趣味に時間を使ったりもしています。
趣味はバイクに乗ることやスノボに行くことなのですが、会社にいたときはあまり時間を使うことができませんでした。夜の予約がない日は早く帰宅してバイクに乗って走りに行ったり、あらかじめ予定を組んでスノボに行く事もできるようになったので、充実しています。
ー お客様の反応に変化はありましたか?
みなさん、シェアサロンの空間とマンツーマンの施術に満足いただいています。
僕のお客様はほとんど女性なので、以前はオープンスペースで放置中やシャンプー後のオールバックの姿を見られることが恥ずかしいと感じるお客様も多かったです。
また、美容室は月1回の自分へのご褒美としてきてくれている方もいます。そんなご褒美の時間にリラックスできないと申し訳ないと感じていました。
SALOWINに移動し、マンツーマン施術と半個室になったことによってプライベート感が増し、リラックスしていただけています。しっかり壁もあり、鏡越しに他の人と目があうこともないので、メイク直しもしやすいと喜ばれています。
SALOWINは受付が無人システムです。
レセプションがいるサロンから来た方は戸惑う方もいると思いますが、お客様からは意外と好評です。”洋服屋さんでスタッフさんと話したくない”と言った心情と少し似ていると思うのですが、気を遣うから関わる人を最低限にしたい方って多いと思います。
フリーランス美容師になってからは、サロンに到着したらフロントに僕がいて、カウンセリングから仕上げまで、ずっと僕だけが担当です。常連のお客様からは『気を遣わなくてすごく楽です』と言っていただいています。
施術中は基本的にずっとお話しているのですが、集中して黙って施術をしたいこともあります。そういう時は『リタッチの時はちょっと集中するから黙るね』と一言入れて集中モードに入ります。
オープンスペースで周りの目もあり、携帯をいじって黙っていることが気まずかったり、気を遣って話しかけようとしてくれるお客様もいると思います。
半個室なのでそういうことがなくなって、お客様も僕も楽だな、と感じていますね。
ロングメニューなので放置中に爆睡してしまうお客様もいます。(笑)リラックスしていただけて何よりです。
ー スタッフ同士の関わりはありますか?
意外にありますね!
放置時間のタイミングが被らなければ、自分がバックルームに行くタイミングに人がいなくてスタッフの誰とも話さない日もあったりします。(笑)
タイミングがあえばバックルームで話したり、カラー剤を作りながら、『そのカラー剤はなんで使っているのか』を聞いたりしています。
シェアサロンは本当に年齢もサロンも役職も全員バラバラです。同じ店舗には美容師の大先輩の方もいますし、打ち出しが全然違う美容師さんもいます。前社にいたら関わることのなかったかもしれません。
そう言った方にアドバイスをいただくこともできるので、これはシェアサロンならではのメリットだなと感じます。

お客様と自分の“やりたい”を軸に。──フリーランス美容師の働き方に迷うあなたへ
ー 今後挑戦してみたいことはありますか?
亀井;僕はブリーチカラーと巻きやすいレイヤーカットスタイルの打ち出しで集客が安定しています。
今のトレンドは巻かない艶髪ですが、学生さんは巻いて可愛いスタイルを要望する方が多いので、継続していきたいと思っています。
しかし、色々なことに挑戦したいタイプなので来年には打ち出しが変わっているかもしれませんね。(笑)
ー フリーランス美容師に挑戦してみたいが、不安…そんな方に一言お願いします!
最近も前職の同期に相談されたので、不安や迷っている人は多いと思います。
会社に所属しながら美容師をすることも、シェアサロンでフリーランス美容師をすることにもメリット・デメリットの両方があると思っています。
しかし美容師になって、スタイリストになって、今でも続けている方は”美容が好き”で続けていると思っています。
これまでやるべきことを当たり前に頑張っている人であれば、環境が変わっても、変わらずお客様は来てくれるのではないかなと思います。
フリーランス美容師になった方が良いのか迷っている…という方は、自分のお客様にどっちがあっているのかという軸で考えてみると良いと思います。
お客様という軸以外でも、自分のやりたいことが今のサロンで叶えられると思うのであれば、やめないで頑張った方が良いと思います。今のサロンでやりたいことを叶えることは難しい、けどフリーランスになれば叶えられるかもしれないと少しでも思うのであれば挑戦してみるのもありだと思います。今の状態を変えたいのであれば、一度飛び込んで挑戦してみると、割と上手く行きます。
不安を感じない人はいないと思います。
今フリーランス美容師として働く美容師さんたちもどこか不安は感じていると思います。むしろ正社員として働いていても不安はありますよね。
フリーランス美容師としてやっていくために必要なことは、個人でやっていくぞ!という”覚悟”だと思います。
自分が頑張ったらその分だけしっかり還元される環境です。美容師という職業でお客様満足度を考えながら、稼げる環境ってなかなかないです。しかしずっと悩んだままだと、年々腰が重くなります。気になっているのであれば若いうちに挑戦するのが1番だと僕は思います。
フリーランス美容師の経験があれば、強制的に生きていくために自分で試行錯誤して、売上が上がるように努力しますし、その結果、色々な選択肢も増えます。
僕は自分でシェアサロンの運営もしてみたいと考えるほど、いろんな美容師さんにおすすめしたい働き方だと感じています。
