美容師として独立したけれど、保険ってどうすればいいの?
そんな疑問を持つフリーランス美容師や美容室オーナーにとって、知っておくべき制度が「美容国保(東京美容国民健康保険組合)」です。
一般的に、法人サロンで働く正社員は社会保険に加入しますが、フリーランスや個人事業主、美容室を1人で経営している方は、社会保険に加入できないケースがほとんど。その場合、国民健康保険や業種ごとの「国保組合」に加入するのが一般的です。
この記事では、美容師・美容業従事者向けの特別な保険制度「美容国保」の仕組みや加入条件、メリット・デメリット、保険料の目安までを詳しく解説します。

美容国保とはどんな制度?
美容国保とは、東京都内または近郊に住む美容師や理容師、及びその家族を対象とした職域型の国民健康保険です。社会保険の対象外となる個人事業主やフリーランスの美容師にとって、有力な保険選択肢です。
加入対象者
- 東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城・山梨在住の美容師
- 東京都内の美容所で就業中の個人の経営者や美容師
- 三親等以内の家族も加入可能
こちらの制度は、「保険料が定額である」、「手厚い給付」、「家族も加入できる」一方で、「収入によっては割高である」、「加入対象が限定されている」という点もあります。
参考リンク:https://kokuho-tokyobiyo.or.jp/
美容国保の4つのメリット
①フリーランスでも簡単に加入可能
雇用契約がないフリーランス美容師や、美容室オーナーでも加入できるので、独立直後でも安心して利用できる制度です。
②保険料が一定でわかりやすい
毎月同じ金額を支払うだけで収入の増減に影響されず、家計の計画を立てやすくなります。
③給付が充実していて安心できる
- 出産育児一時金
- 入院手当金
- 予防医薬品の無償提供
これらは、美容国保の中でも特に優れた特徴です。
④家族も一括で加入できる
扶養制度により、同一世帯内の家族も加入可能です。こちらによって、保険料が国民健康保険より抑えられるケースもあります。
美容国保の2つのデメリットと注意点
①収入が少ないと割高になる可能性がある
前年の所得が低い場合、国民健康保険料より高くなることがあります。
②加入対象者が限られている
対象は東京圏在住の美容師等に限定されていて、地域外の美容室のFCオーナーや美容師は、対象外になります。
美容国保の保険料の具体的な金額
※金額は変動する可能性がございますので詳しくは公式サイトをご確認ください。(https://kokuho-tokyobiyo.or.jp/ )
基本保険料の例
- 40歳未満:従業員13,500円/月・事業主19,000円/月
- 40歳以上:介護保険料を上乗せ
扶養家族の保険料
- 扶養家族(成人):8,500円/月
- 未就学児:5,000円/月
保険料の安さ比較
例えば、家族を抱える美容室FCオーナーでは、安さで国民健康保険よりメリットが大きい可能性があります。
美容国保と国民健康保険の違い
国民健康保険との違い
- 国保:所得連動型=所得が増えると保険料がアップする
- 美容国保:定額性=一定料金で収入への影響が少ない
- 給付内容:美容国保の方が手厚い
社会保険任意継続との比較
社会保険を退職後に任意継続すると、保険料は全額自己負担になり、倍になります。なお、美容国保では、金銭面の負担が少ないケースもあります。
家族扶養の制度を比較
- 社会保険扶養:年間収入130万円未満など条件あり
- 美容国保:家族も加入できる点で柔軟である
美容国保の手続き方法と加入の流れ
加入のための条件と必要書類
美容国保のことで調べる方の多くが、実際に加入を検討しています。こちらでは、美容国保への加入手続きに必要な条件と書類について整理します。
【加入対象条件】
|
【提出が必要な書類】
これらの書類は、東京都理容美容国民健康保険組合の事務局宛に提出します。詳細は公式サイトから最新情報を確認しましょう。 |
加入時期と切り替えのタイミング
美容室に就職、または、独立開業したタイミングで、美容国保への加入が可能です。また、社会保険からの切り替えを行う場合には、タイミングを逃さない様に注意が必要です。
【社会保険の任意継続との切り替え】
退職から20日以内でしたら、社会保険の任意継続を選択可能ですが、その後も、保険料は全額自己負担になります。
美容国保の給付金制度
出産育児一時金の支給
代表的な給付制度が、こちらの出産育児一時金です。被保険者が出産した際、一児につき50万円程度が支給されます。
入院手当金の支給
病気やケガによる入院に対して、1日あたりの手当金が支給される制度もあります。こちらの支給がある点は、国民健康保険にはない美容国保ならではのメリットです。
保健医薬品の無償支給
美容国保では、風邪やインフルエンザなどの予防のため、年に一度保健医薬品が、無償で配布される制度もあります。
美容国保と社会保険・国民健康保険の比較表
項目 | 美容国保 | 国民健康保険 | 社会保険 |
加入対象 | 東京都内の美容業従事者 | 全国の自営業者・無職者等 | 会社勤めの労働者 |
保険料 | 一律(15,500円~21,500円 ) | 前年所得に応じて変動 | 給与に基づき算出(会社と折半) |
家族加入 | 同一世帯であれば加入可 | 扶養制度なし | 被扶養者要件あり |
給付 | 出産手当・入院手当・予防医薬品 | 基本的な医療給付のみ | 傷病手当・出産手当など |
美容国保の加入者の事例
美容室退職後に美容国保を選択
Aさんは美容室を退職後、社会保険の任意継続か国民健康保険、美容国保の3択に直面。保険料と給付のバランスから美容国保を調査して、美容国保に決定しました。
【選んだ理由】
|
美容国保の見直しのタイミングとポイント
美容国保は、美容業界の方にとって特化した健康保険制度ですが、加入後も定期的に見直すことが非常に重要です。
環境や収入状況、法改正などに応じて、最適な保障内容や、保険料の負担を保つためには、適切なタイミングでの見直しと、その際に押さえておくべきポイントを理解しておく必要があります。
見直しのタイミング
美容国保を見直すべきタイミングは、大きく分けて次の様なケースが挙げられます。
- 年に一度の保険料改定時
美容国保の保険料は、毎年見直されることが多く、前年の所得や経営状況に基づいて決まります。毎年の保険料改定時期は、保険組合から通知が届くので、そちらのタイミングで、現在の保険料や、保障内容が自身の状況に合っているかどうかをチェックしましょう。
- 収入の変動があったとき
美容師や美容関連の事業者は、売上や収入が、季節や経済状況により変動しやすい業種です。収入が大きく増減した場合、保険料の負担が適切かどうか、扶養家族の範囲は正しいかどうかなどを見直す必要があります。
- ライフスタイルや家族構成の変化があったとき
結婚や出産、子どもの成長に伴い、扶養家族の数が変わる場合、または介護が必要な家族が増えたときなども、美容国保の加入内容を見直す好機です。こちらは、扶養家族の認定や、保険給付の対象範囲が変わる可能性があるためです。
- 法令や制度改正があったとき
健康保険制度は、法律や国の方針により改正されることがあります。美容国保も例外ではありません。改正があった際は、そちらの内容が自身の保険料や保障に、どの様な影響を及ぼすかを確認して、必要に応じて見直しを行いましょう。
- その他の保険制度への切り替えを検討するとき
社会保険や国民健康保険など、その他の保険制度との比較検討を行い、より自身に適した制度がある場合は美容国保からの切り替えも視野に入れましょう。その際はタイミングを逃さず、切り替えに伴う手続きも、スムーズに行うことが重要です。
見直しのポイント
美容国保を見直す際に、着目すべきポイントは次の通りです。
- 保険料の負担額と所得のバランス
保険料は、所得に応じて決まりますが、実際の収入や経営状況に合っているかどうかを定期的に見直しましょう。過剰な負担になっていないかどうか、逆に保険料を抑えすぎて、給付内容が十分かどうかをチェックすることが重要です。
- 扶養家族の範囲と認定状況
扶養に入っている家族の人数や年齢、収入状況によって、保険料や給付の範囲が変わります。扶養対象者が変わった場合は、速やかに届け出て、正確な認定がされているか確認してください。
- 給付内容の確認
美容国保の給付内容には、医療費の自己負担軽減だけでなく、出産手当金や傷病手当金、介護関連の給付などが含まれます。自身のライフステージや、家族構成に応じて、必要な保障が適切に受けられているのかを確認しましょう。
- その他制度との比較検討
美容国保は、社会保険や国民健康保険と比較して判断することが大切です。特に保険料の負担率、給付内容、手続きの利便性などを比較して、自身に最も合った制度を選択することが望ましいです。
- 加入・脱退の手続き状況のチェック
美容国保の加入や脱退には、一定の手続きが必要で、期限や条件を守らないとトラブルの元になります。見直しの際には、これらの手続きが正しく行われているかどうか、必要書類の提出漏れがないかどうかを確認してください。
- 相談窓口の活用
美容国保には、専用の相談窓口があります。見直しの際に疑問点や不明点があれば、積極的に問い合わせて、最新の情報やアドバイスを受けることが安心です。特に法改正や制度変更があった時期は、情報収集が欠かせません。
美容国保は、美容業界に特化した健康保険制度として多くのメリットがありますが、変化する状況に合わせて定期的な見直しが必要です。
年に一度の保険料改定や収入変動、家族構成の変化、法令改正などのタイミングを逃さず、保険料の負担や給付内容、他制度との比較などのポイントを押さえて見直すことが、安心して美容の仕事に専念できる環境を維持するために重要です。
わからない点は、美容国保の相談窓口を活用して、最適な保険加入状況を常に保つようにしましょう。
美容師の社会保険に関するよくある質問
美容師として働く上で、社会保険の加入義務や保険の選び方に関する疑問は多くある様です。
こちらでは、美容師の社会保険に関連したよくある質問を解説していきます。
社会保険には必ず加入しなければならないの?
はい、原則として法人サロンで正社員として勤務する美容師は、社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する義務があります。こちらは、会社が従業員を雇用する際の法定義務です。
個人経営の美容室やフリーランスの美容師は、雇用契約がなければ社会保険の対象外になり、代わりに国民健康保険または美容国保に加入することになります。
パートやアルバイトでも社会保険に加入できる?
パートやアルバイトであっても、勤務時間や勤務日数が、正社員の4分の3以上であれば、会社は社会保険に加入させる義務があります。
また、労働時間が短くても、週20時間以上・月収88,000円以上・勤務見込みが1年以上等の条件を満たす場合には、「短時間労働者」として社会保険の加入対象になります。
退職後、美容師が加入できる保険は?
美容師が会社を退職した場合、以下の選択肢があります。
- 社会保険の任意継続
- 国民健康保険(市区町村の保険)
- 美容国保(東京美容国民健康保険組合)
- 家族の社会保険の扶養に入る
まとめ
美容師として働く上で、自分の働き方に最も合った保険制度を選ぶことが重要です。法人の美容室に勤める場合は、社会保険に加入しますが、フリーランスや個人事業主の場合は、美容国保や国民健康保険、または社会保険の任意継続といった選択肢があります。
ライフスタイルや収入に合った保険を選ぶことで、将来への不安を軽減できます。
最後に、美容国保に基づいたまとめをします。
美容国保のメリット
- フリーランス・自営業でも加入可能
- 保険料が一律で安心
- 給付金が充実
- 家族全体での保険加入が可能
美容国保のデメリット
- 地域と職業に制限あり
- 収入が低いと割高になる可能性
美容国保とは、美容師のライフスタイルにマッチした保険制度であり、メリット・デメリットをよく理解して選択することで、将来的なリスクに備えることができます。
また、収入の安定性、家族構成、将来のライフイベント(出産など)を踏まえて、美容国保とは、どの様な制度であるのかをしっかり理解して、自分に最も合った健康保険を選びましょう。
