美容室を経営する上で、売上を増やす努力はもちろん大切ですが、同じくらい重要なのが「経費のコントロール」です。一般的に、美容室の経費は売上高の60〜70%を占めると言われており、この数値をどう最適化できるかが利益を左右します。
無駄な出費を減らすことは即効性のある利益改善につながりますし、必要な分野に戦略的に投資すれば、単価UPや顧客数増加といった長期的な成長を実現できます。経費は単なるコストではなく「経営の血液」とも言える存在です。どこを削り、どこに回すかによって経営の未来は大きく変わります。
本記事では「美容室の経費の見直しによる利益増加と年収アップ」というテーマで、経費率の目安から固定費・変動費の区分、削減の具体的手法、さらに投資すべき分野の見極め方までを詳しく解説します。
日々の経営で感じている「もっと利益を残したい」「経費を抑えたいがどこを削るべきか分からない」という疑問を解消し、安定したサロン経営を実現するための実践的なヒントを提供します。
サロウィンではフリーランス美容師のためのシェアサロンだけでなく小規模〜大規模まで美容室経営のトータルサポートサービスを提供しております。 ご相談だけでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。 |
美容室経営における経費率の目安(売上の60〜70%が経費)
まず把握しておきたいのは、美容室の経費率の一般的な目安です。売上の60〜70%が経費として消えていく構造が一般的で、残る30〜40%が粗利益、最終的に7〜10%程度が営業利益というのが理想とされています(参照:日本美容業経営協会)。
この比率を大きく外れてしまうと、いくら売上が伸びても利益が残らない状況に陥る可能性が高まります。
主な経費の割合は以下の通りです。
- 人件費
40〜50%。スタッフの給与や社会保険料が含まれ、美容室経営において最も大きな経費項目です。
- 材料費(原価)
10〜15%。カラー剤、パーマ液、シャンプーなど施術に不可欠な消耗品費です。
- 家賃
10〜15%。立地条件によって大きく変動しますが、売上比率10%以内が理想的とされます。
- 広告宣伝費
5%前後。新規顧客獲得やリピーター強化に必要です。
- その他(光熱費・消耗品費など)
3〜7%。見落とされがちですが、積み重なると大きな負担となります。
このように、美容室の経費は複数の項目で構成されており、それぞれに適正水準があります。重要なのは「自店の経費率がどこに偏っているか」を数値で把握することです。数値化して初めて、改善ポイントが見えてきます。
【美容室の経費】固定費と変動費の区分
美容室の経費を考える上で欠かせない視点が「固定費」と「変動費」の区分です。
固定費は売上の大小にかかわらず毎月発生する支出で、代表的なものは家賃や人件費の一部、リース料、通信費などです。一方で、変動費は売上や施術数に比例して変動する支出で、カラー剤やシャンプーなどの材料費、広告宣伝費などが該当します。
この区分を明確にすると、「固定費をいかに抑えるか」「変動費をどう最適化するか」という具体的な戦略を立てやすくなります。特に固定費は経営の安全性に直結するため、売上が下がっても支払い続けられる水準に抑えることが重要です。
【美容室の経費】固定費を下げる方法(家賃交渉, 電気契約の見直し)
美容室の経営において、売上に関係なく毎月必ず発生する「固定費」は、経費全体の中でも大きな割合を占めます。特に家賃や電気代といったコストは、経営の安定性に直結するため、戦略的に見直すことが必要です。美容室の経費を効率的にコントロールするには、固定費の削減が利益率改善への第一歩といえるでしょう。
①家賃交渉で固定費を軽減する
家賃は美容室経営における代表的な固定費であり、一般的に売上の10%前後が理想とされています。しかし実際には、好立地を求めて家賃負担が15%を超えているケースも少なくありません。家賃が高すぎると利益を圧迫し、経営リスクが増大します。
そこで有効なのが「家賃交渉」です。契約更新時や長期入居による実績を背景に、オーナーと交渉すれば減額に応じてもらえる可能性があります。特に空室率が高いエリアや経済状況が不安定な時期は、オーナー側も安定した入居者を確保したい思惑があるため、交渉が通りやすくなります。
また、広さや立地を見直して移転する選択肢もあります。駅前の一等地で高い家賃を払い続けるよりも、少し離れた立地で広告やSNSを活用して集客した方が、経費削減効果が大きい場合もあるのです。こうした判断を行う際は、単純な賃料だけでなく「売上に対してどれだけ固定費を占めているか」を指標にすると合理的です。
②電気契約を見直して光熱費を削減
美容室はドライヤーや照明、シャンプー台の給湯設備など電気使用量が多く、光熱費も大きな固定費の一つです。一般家庭と同じ感覚で契約していると、必要以上の基本料金を支払っている可能性があります。そこで重要なのが「電気契約の見直し」です。
電力自由化以降、電力会社やプランを比較することで、月々数千円〜数万円の削減が可能になりました。特にピークタイムの使用量に合わせて、契約アンペア数を調整することで、基本料金を抑えることができます。
さらに、省エネ設備の導入も効果的です。LED照明や省エネ型エアコンは、初期投資こそ必要ですが、長期的には大幅な経費削減につながります。環境配慮型の店舗としてイメージアップも期待でき、ブランディング効果も兼ね備えている点がメリットです。
③固定費削減がもたらす経営効果
固定費を下げることは、売上を伸ばす以上に利益改善に直結します。例えば、月5万円の固定費削減は、利益率20%の美容室であれば25万円の売上増加に相当します。つまり、固定費の見直しは「売上を増やすのと同じ効果」を短期間で得られる強力な手段なのです。
美容室の経費を削減することで資金繰りに余裕が生まれ、その分を広告や教育といった「伸ばす経費」へ再投資するサイクルをつくることが、安定経営と年収UPの近道といえるでしょう。
【美容室の経費】変動費を最適化する方法
美容室経営で利益率を改善するには、売上に比例して増える「変動費」の最適化が欠かせません。特に大きな割合を占めるのが材料費です。カラー剤やパーマ液の余剰作成による廃棄は、見えにくい損失につながります。
ロスを防ぐには、薬剤の使用量をスタッフ間で統一し、計量ツールを導入して数値で管理することが有効です。また、仕入れを大容量に切り替えたり、使用頻度の低い商材を整理して人気アイテムに絞ることで、在庫管理の効率化とコスト削減が可能になります。
一方で、見落とされがちなのがサブスクリプション契約です。POSレジ、予約システム、音楽配信など便利なサービスは多いですが、十分に活用されていない契約が経費を圧迫している場合も少なくありません。利用状況を定期的に確認し、不要な契約の解約やプラン変更を行えば、月数千円〜数万円の削減が期待できます。
【美容室の経費】経費削減=利益増の仕組み
美容室経営において、変動費の最適化は利益改善の大きなカギを握ります。中でも注目すべきは「材料費」の見直しです。材料費は売上に比例して増える性質があるため、管理が甘いと利益を圧迫しやすい項目です。
例えば、カラー剤やパーマ液を必要以上に作って余らせてしまうと、そのまま廃棄となり原価率が上昇します。このロスを防ぐには、スタッフ全員で薬剤の適正量を共有することや、計量ツールを導入して使用量を数値で管理することが有効です。
また、仕入れ先を見直し、大容量の業務用をまとめ買いすることで、単価を下げる工夫も欠かせません。さらに、複数ブランドを扱う場合は、人気の低い商材を整理し、使用頻度の高いアイテムに絞ることで在庫管理も効率化できます。
経費は単なるコストではなく、経営を成長させるための資源です。
美容室の独立や開業を検討している方は、こちらのマニュアルもあわせてチェックしてみてください。 → 美容室の独立開業マニュアル
美容室の経費における「削る経費」と「伸ばす経費」の見極め方(広告・教育は投資)
美容室の経営で利益を最大化するためには、やみくもにコストを削減するのではなく、「削る経費」と「伸ばす経費」を戦略的に区別することが欠かせません。まず削るべきは、売上や顧客満足度に直結しない部分の経費です。
例えば、広告宣伝やスタッフ教育といった費用は、単なる支出ではなく「未来への投資」と考えることが重要です。広告費は新規顧客の獲得やリピーターの増加につながり、結果的に売上を押し上げます。
SNS広告やMEO対策などは、少額でも高い費用対効果を発揮できる手段として注目されています。また、教育費はスタッフの技術力や接客力を底上げし、顧客満足度を高めることで単価UPやリピート率向上を実現します。教育にかけたコストは、長期的に見ると確実に利益として還元される可能性が高いのです。
つまり、美容室の経費は一律に削るべきではなく、「削る経費=不要な固定費やロス」「伸ばす経費=売上を生む投資」と明確に線引きすることが成功の鍵です。この視点を持つことで、利益を守りつつ成長へとつなげる経営が実現できます。
①広告費はコストではなく投資
広告宣伝費は、多くの経営者が真っ先に削減を検討する項目です。しかし、美容室においては「顧客が増えなければ売上も伸びない」ため、広告は重要な投資領域です。従来はチラシや雑誌広告が主流でしたが、近年はWebやSNS広告の効果が大きく、少ない予算でも高い集客効果を得られるケースが増えています。
例えば、Instagramでサロンの施術写真を発信することで、広告費をかけずに、数千人にリーチできる可能性があります。また、GoogleマップのMEO対策を行うことで、地域の検索ユーザーからの来店を増やすことも可能です。こうした取り組みは「美容室の経費」の中でも、売上に直結する投資であり、削るべきではありません。
無駄な出費を減らすことは即効性のある利益改善につながりますし、必要な分野に戦略的に投資すれば、単価UPや顧客数増加といった長期的な成長を実現できます。
経費管理の具体的な方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。 → フリーランス美容師のための経費管理術
②教育費が単価UPを実現する
もう一つの重要な投資先は「教育費」です。スタッフの技術力が高ければ、顧客満足度は向上し、結果として単価UPが可能になります。例えば、同じカットでもスタイリストの技術によっては、5,000円と7,000円の差が生まれることがあります。教育は短期的にはコストに見えますが、長期的には売上・利益に直結する投資です。
また、教育には技術だけでなく、接客スキルやカウンセリング能力も含まれます。顧客との信頼関係を築ければ、リピート率が上がり、安定した売上基盤が形成されます。したがって、教育費を「美容室の経費の浪費」と捉えるのではなく「未来への投資」と考えることが重要です。
③経費削減=利益増の仕組みを理解する
経費削減が、なぜ直接的に利益につながるのかを仕組みで考えてみましょう。例えば、毎月の光熱費を1万円削減できたとします。これは売上を1万円伸ばすのと同じ効果がありますが、実際には経費率を考えると、売上で数万円伸ばさなければ同じ利益は得られません。つまり「経費削減=即効性のある利益増加手段」と言えるのです。
さらに、削減によって生まれた余剰資金を、教育や広告に再投資することで、売上の拡大も狙えます。この「削減と投資のサイクル」を意識的に回すことが、長期的な経営安定と年収UPにつながります。
まとめ | 経費の見直しで美容室の利益を増やす!年収UPにつながる節約と投資
ここまで解説してきたように、美容室の経費の最適化は、単なる節約ではなく「利益を最大化する戦略」です。削る経費と伸ばす経費を見極め、広告や教育に投資することで、売上と利益の両方を伸ばすことが可能になります。
さらに、経費削減による即効性のある利益改善と、投資による長期的な成長を組み合わせることで、美容室経営者やスタッフの年収UPを実現できるでしょう。
今一度、自店の経費を項目ごとに見直し、無駄を削りながら未来につながる投資にシフトしてください。経費は単なるコストではなく、経営を成長させるための資源です。戦略的に活かすことで、あなたの美容室は持続的に発展していくはずです。
サロウィンではフリーランス美容師のためのシェアサロンだけでなく小規模〜大規模まで美容室経営のトータルサポートサービスを提供しております。 ご相談だけでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。 |