美容室を移転する際、オーナーの最大の不安は「結局、総額でいくらかかるのか?」ではないでしょうか。新しい店舗を構える費用は、物件契約・内装・退去・宣伝など、複雑なコストが絡み合い、平均で500万円〜1,500万円もの初期投資が必要です。
実際、この費用を正確に把握せず進めると、原状回復費や二重家賃といった「隠れコスト」で、当初予算を数百万円もオーバーしてしまうケースが後を絶ちません。**居抜き交渉や退去交渉で費用を賢く抑えるための「回避術」**を知ることで、安心して新店舗での再スタートを切ることができます。
本記事は、こうした美容室特有の移転コストを「物件取得費」「内装工事費」「原状回復費」など5つの項目に分け、それぞれの相場と具体的な内訳を徹底解説します。
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美容室移転にかかる費用内訳と相場
移転費用の総額を正確に把握するには、単に新しい家賃や工事費だけを見るのではなく、退去コストと集客コストを含めた全体像を把握することが不可欠です。以下に、移転に伴い発生する「物件契約」「内装」「運搬」「宣伝」「退去」の5つの主要なカテゴリに費用を分類し、それぞれの相場とリスクを解説します。この内訳を理解することが、後述する隠れコストの回避と予算オーバーを防ぐための第一歩となります。
①物件取得費(全体の約70%)
最も大きな比率を占めるのが「物件取得費」です。これらを合計すると、初期契約だけで200〜400万円程度かかるケースが一般的です。
- 敷金・保証金:新賃料の3〜10ヶ月分
- 礼金:賃料1〜2ヶ月分
- 仲介手数料:賃料の1ヶ月分(+消費税)
- 前家賃:契約月の日割り+翌月分
- 保証会社利用料:家賃総額の30〜100%
②内装・設備工事費
物件の種別によってコストに大きな幅があります。
- スケルトン物件(内装をゼロから構築):坪単価: 30万円〜60万円(20坪の目安: 約600万円〜1,200万円)
- 居抜き物件(既存設備を再利用):坪単価: 10万円〜30万円(20坪の目安: 約200万円〜600万円)
(参照:全国美容室設計協会「美容室設計・施工単価調査2024」)
③引越し・什器搬出入費用
大型設備の運搬には専門業者が必要になります。
- 引越し費用目安:約100万円〜150万円
- 新設什器購入費:約50万円〜300万円
④宣伝・広告費
新店舗のオープンを周知するためのコストです。集客強化を狙うなら、開店前1〜2ヶ月からプロモーションを始めるのが理想です。
- 内訳例:チラシ・ポスティング、MEO施策、SNS広告、Webサイト修正など。
(参照:リクルート「ホットペッパービューティー集客レポート2024」)
⑤原状回復費用(退去時費用)
旧店舗を退去する際に発生します。**美容室特有の設備(配管・床ドレン・鏡台跡)**がある場合、解体費が上乗せされることがあります。
- 目安:スケルトン返却の場合、坪単価10〜20万円、総額で100〜300万円程度。
- ポイント:原状回復の範囲は契約内容によって異なるため、退去前に必ず見積書を取得し交渉しましょう。
美容室の移転に関する隠れコスト・追加費用と最終チェックリスト
移転において最も危険なのが、当初の見積もりに含まれない「隠れコスト」による予算オーバーです。内装デザイン費や、美容室特有の設備工事費、そして営業停止期間中の人件費といった予測外の出費を防ぐため、ここでは代表的な追加費用と、資金計画に不可欠な最終チェックリストを解説します。事前に把握しておくことで、資金ショートを防ぎ、移転計画の安全性を高めることができます。
①隠れコスト・追加費用の内訳
- 電気・ガス・水道の工事費:電力容量の増設や給湯設備の引き直し、排水勾配の調整などは別途工事が必要になる場合があり、数十万円規模の追加になることもあります。
- 消防・保健所の指摘対応費:換気設備や避難経路、手洗い設備の追加工事が発生するリスクがあります。
- デザイン施工費:インテリア、照明、鏡面加工など、デザイン重視の店舗で別途発生します。
- 美容室特有の設備費:給排水の引き直しや、高出力が必要な機材のための電気容量の増設費用。
- 営業停止期間中の人件費:工事や引越しで営業を停止する間のスタッフ給与や社会保険費用。
- 廃棄・残置物処分費:旧店舗で不要になった大型什器・備品の処分費用。
②移転費用チェックリスト
| 項目 | 概要 | 目安金額 |
| 敷金・礼金・前家賃 | 新物件契約に伴う初期費用 | 200〜400万円 |
| 仲介手数料・保証会社料 | 賃貸契約関連費用 | 30〜80万円 |
| 内装工事費 | スケルトン/居抜きによる設備・内装構築費 | 200〜1,200万円 |
| 原状回復費 | 旧店舗の解体・撤去・補修等 | 100〜300万円 |
| 二重家賃(重複賃料) | 移転スケジュール重複による賃料の二重発生分 | 30〜60万円(賃料帯に依存) |
| 設備・什器費 | シャンプー台、セット面、レジ、ミラー等の購入・設置費用 | 50〜300万円 |
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美容室の移転のスケジュール管理と二重家賃回避術
美容室の移転は、単なる引越しではなく、「旧店舗の退去」と「新店舗の契約・工事」を精密に連動させるプロジェクト管理です。特に、スケジュールが重複することによる二重家賃や、工期の遅れを防ぐため、ここでは移転の主要工程と、コストを最小限に抑えるための実践テクニックを解説します。
①美容室の移転工程表
- 物件探し〜契約(約2ヶ月):移転希望日の3ヶ月前行動開始が理想。賃料交渉や条件設定が重要。
- 設計・施工業者の選定(1ヶ月):3社以上の相見積もりを取得し、美容室専門の施工会社を選ぶ。
- 内装工事〜設備搬入(1〜2ヶ月):給排水・電気工事を先行し、消防・保健所の確認申請も同時に進める。
- 旧店舗の原状回復・退去(2週間〜1ヶ月):営業終了後、解体と撤去作業を行う。
②二重家賃を防ぐ実践テクニック
二重家賃が発生する典型パターンは、新店舗の工事期間と旧店舗の退去期間が重なることです。
- 工期短縮:夜間作業や分割搬入で作業効率を上げる。
- 貸主交渉:退去後の一定期間賃料免除や、入居者募集期間中の賃料負担軽減を話し合う。
- 契約開始日の調整:新店舗の賃貸契約開始を工事直前に設定し、不要な家賃発生を避ける。
- 退去タイミング調整:契約の更新月を確認し、更新直前の退去(または更新料発生を避ける通知)を計画的に行う。
美容室の移転費用を抑える具体策
移転費用総額を抑え、ROI(投資対効果)を最大化するためには、戦略的な物件選定と交渉が不可欠です。以下では、最も高額になりがちな「内装費」と「原状回復費」を最小限に抑え、資金計画に余裕を生み出す具体的な手段を解説します。費用を削減する際は、リスクと効果のバランスを取ることが大切です。
①居抜き物件を活用する
既存設備を再利用できる居抜き物件は、内装コストを最大60%削減できる可能性があります。
- メリット:シャンプー台、配管、ミラーなどを再利用可能。内装コストの大幅な削減。開店準備期間も短縮できるため、家賃の二重払いリスクも軽減されます。
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②原状回復費の回避策(交渉と譲渡)
原状回復費は、高額な隠れコストです。
- 明文化:「返却条件(スケルトン返還の有無、設備撤去範囲)」を特約条項として契約段階で明示する。
- 居抜き譲渡:同業者への譲渡が成立すれば、高額な解体・原状回復費(100万円〜300万円程度)が不要になります。退去3ヶ月〜6ヶ月前からサロン仲介業者で譲渡募集を始めましょう。
- 解体費の比較:解体・廃棄は業者間で見積差が大きいため、必ず3社以上の相見積もりを取得し、費用の内訳を細かく確認します。
③補助金・資金計画の活用(簡略化)
自治体によっては、美容室の開業・移転を支援する制度があり、初期コストを圧縮できます。
- 補助金・助成金の活用:自治体や国の補助金・助成金を活用し、初期投資コストを圧縮します。申請には見積書や事業計画書が必要になるため、移転計画の初期段階で確認しておくことが重要です。
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まとめ|移転費用を正確に把握し、賢く抑えるための3つの要点
美容室の移転費用は、平均で500万円〜1,500万円が目安ですが、「交渉力」「タイミング」「物件選び」によって、その額を数百万円単位で変動させることが可能です。
主な節約ポイント3点
- 原状回復の回避:居抜き・譲渡案件を積極的に活用し、退去時の高額費用を回避する。
- 重複賃料の削減:契約・退去時期を戦略的に調整し、二重家賃を削減する。
- 初期コストの圧縮:自治体の補助金・助成金を活用し、初期投資コストを圧縮する。
これらを踏まえ、計画性を持った移転スケジュールを構築すれば、コストを最小限に抑えつつ、より良い立地・環境での再スタートを切ることができます。
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