「いつかは自分のサロンを持ちたい」そう考えながらも、独立の一歩を踏み出せずにいる美容師さんは少なくありません。
しかし、開業には、夢だけでなく現実的な準備や判断も求められます。
「どれくらいの資金が必要?」「必要な書類はなに?」「物件や内装の予定は?」誰もが直面するこうした疑問や不安を持っていると思います。
この記事では、開業に必要な全体像がつかめるようにわかりやすくまとめました。
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独立開業の目的を“明確にする”とは?
「なんとなく独立したい」「いずれ自分の店を持てたらいいな」そう考えるのは自然なことです。
しかし、そのなんとなくのまま動き出してしまうと、後々の経営判断で迷ったり、集客に苦しんだり、経営方針にブレがでてきてしまう原因になります。
まず最初にやるべきは、「なぜ、自分は独立したいのか?」というきっかけを言語化しましょう。
言語化することにより、美容室開業の“軸”が明確化され、今後の準備もスムーズに行うことができます。
具体的な深掘りの例
・「もっと自由な働き方がしたい」
なぜ?→ 時間をコントロールしたい/家族との時間を大切にしたい
・「価格ではなく、自分の技術で選ばれたい」
どんな技術?誰に提供したい?
・「もっと丁寧な接客をしたい」
現職では時間が足りない?ターゲット層を絞りたい?
・「将来はスタッフを育てる立場になりたい」
自分が理想とする働き方やチーム像は?
このように、“願望”を“目的”に変えるには、「なぜ?」を何度も問い直すことが重要です。
5分でできる“独立の理由”整理シート
質問項目 | あなたの答え(書き出してみましょう) |
なぜ独立したいのか? | 例:自分の技術で勝負したい/時間を自由に使いたい |
理想のサロンはどんな場所? | 例:木のぬくもりがある/30代女性が落ち着ける空間 |
どんなお客様に来てほしい? | 例:価格よりも技術・雰囲気重視の人/髪の悩みが深い人 |
どんな働き方をしたい? | 例:1日5名限定で丁寧に対応したい/育児と両立したい |
10年後、どんな自分になっていたい? | 例:スタッフと一緒に地域密着のサロンを展開していたい |
この“目的の明確化”は、あとで作る事業計画書やコンセプト設計のベースにもなります。
ここを曖昧にせず、しっかりと言葉にすることが、開業の第一歩です。
開業資金の相場【費用項目5選&目安金額まとめ】
開業資金はいくら必要?
美容室を開業するには、一般的な目安で2,000万円以上の資金が必要とされています。これは店舗の立地や規模、内装のこだわり具合、導入する設備の種類などによって大きく変わります。
たとえば、地方で小規模に始める場合は150〜400万円程度でも現実的ですが、都心部の人気エリアで5席以上のサロンを目指す場合は、2000万円以上の資金が必要になることがほとんどです。
開業費用の項目別内訳
<条件>坪単価:¥20,000坪数:20坪スタッフ人数:スタイリスト1名・アシスタント1名
費用項目 | 目安金額 | どんな費用? & なぜ必要? |
① 物件取得費 | 320〜400万円 (賃料の8ヶ月〜10ヶ月分) |
敷金・礼金・仲介手数料など。 立地が良いとさらに高額に。 |
② 内装工事費 | 1,000〜1,200万円 (1坪あたり50万円〜60万円) |
サロンの世界観を表現する重要ポイント。 工事内容が大きく変動。 |
③ 設備 | 200万円 | シャンプー台、セット面、ワゴン、レジ、ドライヤーなど。 中古やリースで費用を抑える工夫も可能。 |
④ 運転資金 (6ヶ月) |
600万円 | 売上が安定するまでの生活費・家賃・人件費の備え。 6ヶ月分あると安心。 |
開業費用の調達方法・融資についてもっと知りたい方は、👉 美容室の開業融資は公庫がカギ!成功のポイントを解説
必須の書類と手続き|開業前に忘れてはいけない行政対応
美容室の開業には、店舗や設備の準備と並行して、さまざまな“届出・申請”という実務的な手続きが必要になります。
ここでは、 「開業に必要な具体的な書類」「どの機関に、いつまでに出すのか」といった、タイムラインとフローにフォーカスして解説します。
美容室開業に必要な書類・手続き一覧
書類・手続き名 | 目的・役割 | 提出先・注意点 |
美容所開設届(保健所) | 美容室を正式に営業するための届出。 営業開始の10日前までに提出し、保健所の立入検査を受ける必要がある。 |
管轄の保健所/現地立入検査で設備やレイアウトのチェックを受ける。基準に合わないと開業できない。 |
開業届(税務署) | 税務上、事業を始めたことを国に届け出る書類。 提出しないと納税処理ができない。 |
開業後1ヶ月以内に税務署へ提出/屋号もこの時に登録する。 |
青色申告承認申請書 (税務署) |
青色申告をすることで、最大65万円の控除など節税効果が得られる。 開業届とセットで出すのが基本。 |
開業日から2ヶ月以内に提出が必要/税理士を入れる場合もここで相談。 |
労働保険・社会保険の手続き (労基署/年金事務所) |
スタッフを雇う場合に必要。 労災保険・雇用保険・健康保険・年金の加入手続きが発生する。 |
雇用の有無で手続き内容が変わる/開業前に社会保険労務士へ相談しておくと安心。 |
労働保険・社会保険の手続き(スタッフを雇う場合)
- 対象:スタッフを1人でも雇う場合に必須
- 内容:労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金の加入手続き
- ポイント:開業前に社労士へ相談すると安心。手続きは複雑なので外注も◎
美容所の開設までの流れ
① 開業予定日の10日前までに「美容所開設届」を提出
② 保健所職員がサロンへ現地立入検査(30分〜1時間)
③ 設備・構造基準をクリアすれば「許可証」が発行され、営業可能に
美容師が開業するために必要な資格・許可とは?
美容室を開業するには、内装や資金だけでなく、法的に必要な資格と行政手続きをきちんとクリアすることが絶対条件です。
どれか1つでも抜けていると、営業許可が下りず、開業日を迎えることができません。
また、美容室を開業するためには、物件・内装などの準備と並行して、各種の行政手続きも計画的に進めておく必要があるため注意しましょう。
以下の4つのチェック項目
項目 | 概要 | 関連機関・提出先 |
美容師免許 | 美容業を営むには必須。本人が施術を行わなくても、施術スタッフ全員に必要。 | 国家試験(厚労省)合格により取得 |
管理美容師 (必要に応じて) |
スタッフを2人以上雇う or オーナーが現場に出ない場合に必要。 美容師免許取得後3年以上+講習受講。 |
各都道府県の美容師会など |
美容所開設許可 (構造基準) |
衛生・設備面の保健所基準に適合している必要あり。 手洗い場・換気・給湯など要チェック。 |
保健所(詳細は地域により異なる) |
防火管理者届出 (必要な場合) |
商業施設や複合ビル内の店舗などでは、 消防署へ防火管理者選任届を出す必要がある。 |
所轄の消防署/管理会社経由の場合もあり |
注意点とアドバイス
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資格や許可の準備は、抜け漏れなくチェックしていきましょう。
開業スケジュールとスムーズな進行のコツ
美容室の開業準備は、できるだけ早めに始めることが成功のカギです。理想は開業の6〜12ヶ月前から計画的に動き出すこと。
特に物件探しや融資、内装工事などは想定以上に時間がかかるため、後ろ倒しになるとオープンが遅れるリスクもあります。
まずは以下のようなスケジュールをもとに、全体の流れを把握しておきましょう。
開業スケジュール目安(逆算式)
開業◯ヶ月前 | やること | ポイント解説 |
12ヶ月前 | 開業コンセプトの明確化 | 「なぜ独立するのか?」「どんなサロンにしたいか?」を深掘り。 ターゲット・価格帯・サービス内容を明文化する。 |
10ヶ月前 | 資金調達・事業計画 | 自己資金を整理し、融資を受けるための創業計画書を作成。 日本政策金融公庫や信用金庫へ相談を始める。 |
4~6ヶ月前 | 物件探し | ターゲットに合う立地を探し、保健所の基準も事前にチェック。 人気エリアは競争が激しいので早めに動く。 |
3ヶ月前 | 内装・設計スタート | 施工会社とレイアウト・設備の打ち合わせ開始。 サロンの“世界観”を形にする重要ステージ。 |
2ヶ月前 | 物件契約 | ご契約が開業よりも前すぎると空家賃を払うことに。 |
1.5〜2ヶ月前 | 内装工事 | 施工会社と打ち合わせし、最短で進めてもらえるよう相談しましょう。 |
1ヶ月前 | 集客&オープン準備 | SNS投稿やチラシ配布で地域に告知。内覧会・プレオープンでお客様の反応を確認して最終調整。 |
ポイント
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物件選びと内装・設備のポイント
美容室の開業準備において、「どこで開くか」「どんな空間をつくるか」は、サロン経営を大きく左右する重要な要素です。
また、立地の選び方ひとつで集客力が変わり、内装や設備の設計次第で、働きやすさ・回転率・リピート率までも影響を受けます。
以下の表は、「店舗選び」「店内の設計」「設備購入」で失敗しないための基準を整理したリストです。
項目 | 判断の基準 | NG例/避けるべきこと |
① 立地選び | 来てほしい客層と街の特性が合っているか?(例:OL→駅近、主婦→住宅街) | 物件が安い・キレイという理由だけで場所を決める |
② 通行量・競合チェック | 平日昼間と土日の人通りを実際に歩いて確認。同ジャンルの美容室が密集していないか? | 開業後に同業サロンが隣にあったと気づく |
③ 内装設計 (動線重視) |
セット面からシャンプー台、スタッフの動きがスムーズか? 来客動線とスタッフ動線を分ける工夫があるか? |
見た目重視で設計した結果、狭くて動きづらい店舗になる |
④ 設備選び (実用性) |
耐久性・掃除のしやすさ・故障対応のしやすさで選ぶ新品にこだわらず、中古やリースも検討 | オシャレさやデザイン性だけで設備を決定 |
⑤ 保健所基準クリア | 手洗い場・換気・給湯・排水など、保健所基準を事前にチェック図面を持って事前相談がベスト | 工事完了後に“基準未達”で再施工になる |
実際にやるべき行動
- 物件内覧時は昼と夜、平日と週末、最低2回行く
- 図面ができたら着工前に保健所へ相談
- 設備は“施術者目線+メンテコスト”で選ぶ
- 物件契約前に「借りた後にどこまで工事できるか」を必ず確認
物件・内装・設備は、一つでも判断を誤れば、集客・動線、さらには開業許可にまで影響が及びます。
上記のチェックリストを活用し、ポイントを一つひとつ丁寧に確認することで、無駄なコストやトラブルを防ぐことができます。
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開業後にやること【1年間の行動計画4ステップ】
開業からの最初の1年間は、「どんな数字が出ているか?」「どこを改善すればいいか?」を見極める大事な時期です。
なんとなく営業を続けるのではなく、「このタイミングでこれを確認する」という視点を持っておくことで、後から大きな差が出てきます。
開業から12ヶ月間にやるべきことを時系列で整理したリストをまとめました。
美容室開業後にやるべき1年間の行動チェックリスト
時期 | やること | 目的・ポイント |
開業1ヶ月目 | 来店状況・売上の記録と分析 (来店数・単価・再来率) |
実際の数字をもとに“初動”を把握。 赤字が出ていないか確認し、必要なら即改善。 |
開業3ヶ月目 | メニュー内容や価格設定の見直し/ お客様の声を反映 |
お客様の反応やリピート傾向を分析し、 現場に合った改善を行う。 |
開業6ヶ月目 | リピーター育成施策 (DM・LINE・口コミ施策)を強化 |
ファンづくりが安定経営のカギ。 来店サイクルを意識して再来率を高める。 |
開業12ヶ月目 | 年間売上・利益の振り返りと、 次年度の目標・戦略を立てる |
1年の結果を冷静に分析し、次の経営ステップへ。 数字と感覚をリンクさせる練習にも◎。 |
開業後、ただ毎日をこなすだけでは、何がうまくいっていて、何が課題なのかを把握することができません。そこで大切なのが、「数字」と「お客様の声」の2軸を、習慣として定期的にチェックすることです。
まず、月ごとに来店数・平均単価・再来率・売上などを記録することで、美容室の傾向が見えてきます。見える化することによって、美容室の戦略となりますのでぜひ、おすすめします。
開業後の売上・経費管理には、青色申告と会計ソフトの活用がカギです。
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よくある質問(Q&A)
Q.開業準備はいつから始めるのが理想ですか?
A.できれば開業の6〜12ヶ月前から準備を始めるのが理想です。
物件探しや融資申請、内装工事には時間がかかり、思わぬトラブルでスケジュールがズレることもあります。スムーズなスタートのために、早め早めの行動が大切です。
Q. 美容師免許を持っていなくても開業できますか?
はい、美容師免許がなくてもサロンのオーナーになることは可能です。
ただし、施術を行うには有資格者が必要であり、スタッフを2名以上雇う場合は「管理美容師」の配置も必要になります。資格要件を満たす体制を整えておきましょう。
まとめ|開業成功のカギは「準備の質」にある
美容室の開業は、一見複雑に感じるかもしれませんが、準備の“質”がそのまま成果、形につながります。
この記事を通して、全体の流れ・必要な資金・書類・スケジュール感をつかめたなら、次は「行動に移す」ステップです。
まずは、「独立の理由」から紙に書き出してみましょう
チェックリストや行動計画に沿って、一つひとつ確実に準備していきましょう。
不安や疑問があるなら、専門家や開業経験者に相談することもおすすめします。
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