今や美容室の集客は「ホットペッパーだけ」では通用しない時代。InstagramやTikTok、X(旧Twitter)といったSNSは、サロンの世界観を伝え、新規集客やリピーター獲得に大きな力を持つツールです。しかしその一方で、軽い気持ちで投稿した内容が原因で顧客との信頼を失ったり、法的トラブルや炎上を招いたりするリスクも年々高まっています。
たとえば、無断で施術後の写真をアップすれば「肖像権の侵害」にあたりますし、トリートメントを紹介する際に「絶対に髪が再生する」と表現すれば「薬機法違反」です。加えて、音源や画像の無断使用は「著作権トラブル」、背景にうっかりカルテが映り込んでいれば「個人情報漏洩」の問題も発生しかねません。
これらのリスクは、知らずに起こしてしまっても法的責任を問われる可能性があり、最悪の場合は店舗の信頼・売上・営業継続にまで悪影響を及ぼします。
美容室主に「肖像権の侵害」「薬機法違反」「著作権トラブル」「顧客情報の漏えい」などです。本記事では、これらを未然に防ぐために必要な知識・ルール整備の方法・実際の運用ポイントを、法律と現場両方の視点から徹底解説します。
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SNS投稿で美容室が注意すべき3つの法律(肖像権・薬機法・著作権)
①肖像権・プライバシー権
お客様やモデルの顔写真、全身写真をSNSに投稿する場合は、必ず事前に「掲載同意」を取得する必要があります。これは民法・判例上の肖像権の考え方に基づいており、たとえ施術代を無料にしていても無断投稿はNGです。
- 取得方法:紙の同意書、Googleフォーム、LINEアンケートなど
- 書式のポイント:掲載媒体(Instagram/Xなど)、期間、削除希望時の対応を明記
- 注意点:未成年の場合は保護者の同意も必要です
②薬機法(旧薬事法)
美容商材の紹介や施術効果を謳う場合、「効能効果を断定する表現」は薬機法により禁止されています。違反すると行政指導の対象となるほか、悪質な場合は罰金・懲役刑もあり得ます。
- NG表現例:「絶対に髪がツヤツヤに!」「100%毛が生える」
- OK表現例:「保湿成分でうるおい感アップ」「お客様の声:髪が柔らかくなった」
- 対応策:表現チェックシートを導入し、スタッフが確認してから投稿
③著作権・音楽使用
ショート動画でBGMをつける際、商用利用が許可されていない音源を使うと著作権侵害となる可能性があります。
安全な方法
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- SNS公式のライセンス済BGM(TikTok・Instagramの音源機能)
- 商用利用OKなフリー音源(DOVA-SYNDROMEなど)
- 有料BGMサービス(Artlistなど)
2. 美容室SNSトラブルの実例と対応法【よくある3ケース】
ケース1:モデル写真の無断投稿
概要:カットモデルとして来店した学生が、顔出しのまま無断でInstagramに写真が投稿され、本人や親からクレーム。
対応:すぐに削除・謝罪し、今後は書面での事前同意取得を徹底。スタッフ全員に撮影ルールを再教育。
ケース2:薬機法に違反する表現
概要:「このトリートメントで絶対に髪が再生する!」と投稿した結果、他サロンからDMで指摘。行政相談窓口にも通報されそうに。
対応:投稿削除+社内で薬機法勉強会実施+投稿前チェックリスト導入。
ケース3:スタッフの裏アカウントが炎上
概要:スタッフがプライベートアカウントで顧客に関する発言をし、SNSで炎上。Google口コミにも波及。
対応:スタッフへ注意+就業規則のSNS項目を見直し。個人アカウントでの投稿ルールを制定。
3. SNS投稿時のルール整備とスタッフ教育のポイント
美容室のSNS運用において、最大のトラブル要因は「ルールがない」「スタッフ間の認識がバラバラ」な状態です。よかれと思って投稿した内容が炎上を引き起こしたり、法律違反につながってしまうのは、ほんの少しの認識のズレから起きることがほとんど。ここでは、トラブルを未然に防ぐためのルール整備と教育体制づくりについて、実践的なポイントを解説します。
SNSガイドラインの整備と共有
まず、投稿ルールや禁止事項を明文化した「SNSガイドライン」を整備することが第一歩です。紙・PDF・クラウドなど形式は問いませんが、スタッフがいつでも確認できる状態で、全員に説明し署名をもらう運用が理想です。
- 投稿可否の判断基準(写真、動画、コメントなど)
- 使用可能なBGMや画像素材の種類
- 顧客の顔・氏名・LINE・カルテなど個人情報に関する取り扱い
- 薬機法・肖像権など法令違反のNG例と解説
- アカウントの権限設定(誰が投稿できるのか、誰が確認するのか)
実際のサロン現場では「知らなかった」「他のスタッフはやっていた」というケースが多発します。だからこそ、ガイドラインの周知徹底と、ルールに従ってもらうための仕組み(チェックリスト・署名・研修など)が必要不可欠です。
スタッフ向けの教育・研修制度の導入
SNSは“感覚”で運用してしまいやすい媒体だからこそ、定期的な教育が効果的です。
- 入社時:SNSルール研修(薬機法・肖像権・個人情報保護など)を実施
- 年1回のアップデート研修:法律改正・事例・最新トレンドを学ぶ場を設ける
- 過去に起きた炎上・クレーム事例を教材として活用する
- 研修参加を記録し、実施報告書を残しておく(法的な備えにも)
加えて、投稿前に「SNSリーダー」などの担当者が内容をチェックする仕組みがあると、現場の緊張感やミスの削減に繋がります。
同意書・記録の徹底管理
いくら同意を得ていても、「書面や履歴に残っていなければ意味がない」というのがSNSトラブル対応の基本です。特に肖像権・個人情報の問題は“言った言わない”で泥沼化するため、証拠が残る運用を前提にしましょう。
- 撮影・掲載同意書は「撮影日ごと」「SNS掲載ごと」に取得
- Googleフォームでの電子取得+PDF保管も有効
- モデルに投稿内容を事前確認する「掲載確認LINE」も効果的
さらに、投稿後はスクショ・ログを残しておくと、万一削除や修正が必要なときにもすぐに対応できます。DropboxやGoogle Driveを使ったフォルダ管理もおすすめです。
スタッフを巻き込む仕組みをつくる
ルールを作っても守られなければ意味がありません。そのためには、スタッフが“自分ごと”としてルールに関わる仕組みを作るのが効果的です。
- SNS担当者を輪番制にして責任感を持たせる
- 投稿案をSlackやLINE WORKSで共有し、全員でフィードバックする文化を育てる
- 「安全な投稿事例」を共有するポジティブな取り組みも効果的
投稿ルールを単なる“縛り”として捉えるのではなく、「お客様やサロンを守るためのルール」であるという共通認識を作ることが、教育の核心です。
4. 投稿前チェックリスト|社内運用テンプレ&同意書の活用法
SNS投稿は「誰でも気軽にできる」反面、気づかぬうちに法的リスクや顧客トラブルを引き起こすことがあります。そのリスクを最小限にするためには、投稿前に確認すべきポイントをチェックリストとしてルール化し、チーム全体で共有することが大切です。このセクションでは、具体的なチェック項目の解説と、実際の社内運用に落とし込む方法を詳しく解説します。
投稿前チェックリスト7項目の詳細解説
①撮影・掲載について、顧客本人またはモデルから同意を得たか?
- 撮影OK=SNS掲載OKではありません。同意書や口頭確認だけでなく、必ず記録に残す運用をしましょう。
- SNSごとの使用範囲も明示(Instagramのみ掲載、TikTok不可など)
②写真・動画に他人や他社のロゴ・人物が映り込んでいないか?
- 背景に他の来店客が写っている場合はぼかし処理などが必要です。
- 鏡の映り込みにも注意。映り込みによるトラブルが実際に発生しています。
③薬機法に反する断定表現(絶対・効果あり・治る)を使っていないか?
- 美容師が商品や施術の効能を“断定的に”表現するのは法的NG。
- 例:「髪が絶対サラサラに」→NG、「保湿力に定評あり」→比較的安全
④商用利用可能な音源・BGMを使用しているか?
- TikTokやInstagramの公式音源機能を利用するのが最も安全です。
- YouTubeに転載する場合は別途BGMのライセンス確認が必要になることも。
⑤顧客名・LINE ID・カルテ情報など個人情報が映っていないか?
- 背景に置いたカルテ、予約表、スタッフ用メモが写っていないか確認を。
- 特に施術中の手元写真は細かくチェックする癖をつけましょう。
⑥投稿予定の画像・動画・テキストを他スタッフにダブルチェックしてもらったか?
- 投稿前に必ず「第三者の目」でチェックすることで見落としを防ぎます。
- チェック担当者に役職を設けると運用がスムーズになります(例:SNSリーダー)
⑦問い合わせ・削除依頼の受付方法が決まっているか?
- DMでクレームが来たときの対応フローを決めておく(誰が返信するか、どこまで対応するか)
- 削除対応や投稿修正に必要なログ(元データ・投稿日時など)も保管しておくとベター
チェックリストの社内運用法
紙・ホワイトボード・LINE WORKSなど形式は自由でOK
- 投稿担当者の名前・日時・確認内容を記録し、残す習慣をつける
- 複数店舗を展開する場合は共通のテンプレートを用意する
チェック後のサインオフ制度を導入
投稿OKの印鑑・サインをもらうことでミスを減らすと同時に責任の所在も明確化
定期レビュー会で内容の振り返りを実施
月1回程度、投稿内容を見直し、改善ポイントや成功事例を全体で共有する文化をつくる
同意書テンプレートの活用
テンプレートには最低限以下を明記
- 掲載媒体の範囲(Instagram/HPなど)
- 使用目的(広報、販促、実績紹介)
- 使用期間と撤回の方法(希望があれば削除に応じるなど)
活用方法
- 紙 or Googleフォーム(電子署名)
- QRコード化して受付に掲示し、スマホで読んでもらう運用も便利
- LINEで送信して、記録をトーク履歴で残す方法も人気
このチェックリストと同意書の運用を徹底するだけで、SNS発信のリスクは大幅に減少します。また、スタッフが安心して発信できる環境を整えることで、投稿の質や頻度も自然と向上していきます。
5. SNS投稿ポリシーを就業規則・マニュアルに落とし込む方法
SNSルールは、ガイドラインとして配布するだけでなく、就業規則や業務マニュアルに明記しておくことで法的な効力も持たせられます。言い換えれば、ルールを“サロンの公式な取り決め”として整備することが、実効性を高め、万が一のトラブル対応でもオーナーや店長を守る盾になります。
就業規則への記載例
- 「顧客情報や撮影画像を無断で投稿することを禁止する」
- 「薬機法その他法令に反する内容の投稿を行った場合、懲戒の対象とする」
- 「個人アカウントでの不適切な投稿に関しても業務上の信用を損なう行為として対応する」
これらを記載する際は、スタッフにも十分に説明し、納得のうえで雇用契約書や入社同意書と一緒に扱うことで法的リスクを軽減できます。
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マニュアルやオペレーションとして整備
- 撮影OK→掲載確認→投稿前チェック→投稿→ログ保管の一連フローを明文化
- 誰が撮影し、誰がチェックし、誰が投稿するのかという「責任の所在」を明確にする
- 新人スタッフには研修マニュアルの中でSNS運用ルールを含める
定期的な見直しとアップデート
SNSの仕様や法律(特に薬機法や個人情報保護法)、さらには社会の炎上感度も日々変化します。そのため、ポリシーも半年〜1年に一度は見直し、必要に応じてアップデートすることが推奨されます。
- 定期的にSNSガイドライン委員(SNS担当者・店長)によるレビューを行う
- 厚生労働省や薬機法関連の改正内容を確認し、対応をルールに反映
社内で一度ルールが整備されれば、その後の店舗展開やスタッフ教育もスムーズになり、SNSを「安心して使える武器」として活用できます。
おわりに|炎上・違反を防ぎ、安全な発信でファンを増やそう
美容室の魅力を伝えるうえでSNSは強力な味方です。しかし、一歩間違えると顧客との信頼関係が崩れたり、営業停止などの大きな損失に繋がる可能性もあります。
この記事で紹介したルール整備やチェックリスト、ガイドラインは、法律を守るだけでなく「安心して魅力を発信するための土台」となります。ぜひ、店舗としてのSNS戦略に活かして、安全かつ効果的な発信で“ファンづくり”に繋げましょう。
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