フリーランス美容師として働く人が増える中、「老後の備え」をどうするかは避けて通れないテーマです。会社員のような退職金制度がない以上、自分で積立や準備をしておかないと、いざ引退するタイミングで「貯金がない」「年金だけでは足りない」と困ることにもなりかねません。
実は、フリーランスでも“退職金のように使える”制度はいくつか存在します。節税しながら将来に備える方法もあり、早めに始めれば始めるほど効果も大きくなります。
この記事では、小規模企業共済・iDeCo・積立型保険の違いや活用法を中心に、退職金を「自分でつくる」ための具体的なステップをわかりやすく紹介します。
1. フリーランス美容師に「退職金制度」はある?
まず最初に押さえておきたいのは、フリーランス(個人事業主)には、会社員のような「退職金制度」は存在しないということです。
ただし、注意したいのは、会社員であっても退職金が必ず支給されるわけではないということです。退職金の有無や金額は企業ごとに異なり、制度自体が存在しない会社もあります。退職金は法律で義務づけられたものではなく、就業規則や退職金規程によって定められた任意の制度なのです。
そのため、会社員・フリーランスを問わず、将来の生活資金は自分自身で準備していく姿勢が重要です。
そのため、フリーランスは自分自身で将来に備える仕組みを作る必要があります。
とはいえ、国や金融機関が提供する制度を上手に活用すれば、会社員と同じように“退職金に相当するお金”を用意することは十分可能です。
2. 退職金代わりになる3つの積立制度
まず最初に、フリーランス美容師が利用できる主要な「退職金代わりの制度」を表で比較してみましょう。
制度名 | 特徴 | 掛金上限 | 節税効果 | 引き出し条件 |
小規模企業共済 | 国の“退職金制度”に近い積立制度 | 月1,000円〜7万円 | ◎(全額所得控除) | 廃業・老後・死亡時などに受け取れる |
iDeCo | 自分で運用する年金積立 | 月5,000円〜68,000円 | ◎(掛金&運用益が非課税) | 60歳以降に受け取り可能 |
積立型保険(個人年金) | 保険会社の貯蓄型商品 | 商品による | ◯(一部控除) | 満期時 or 契約条件による |
以下では、各制度について初心者の方でも理解できるよう、より詳しく解説していきます。
① 小規模企業共済(しょうきぼきぎょうきょうさい)
どんな制度?
小規模企業共済は、国が運営する「自営業者やフリーランス向けの退職金制度」です。正式には中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、フリーランス美容師のような個人事業主でも加入できます。
毎月一定の金額を積み立て、事業を辞めるタイミングや高齢になったときに「退職金」のような形で一括または分割で受け取れる制度です。掛金は月1,000円から7万円まで1,000円単位で設定可能で、ライフスタイルに合わせて調整できます。
メリット
- 掛金はすべて所得控除の対象となり、節税効果が高い(確定申告で税金が安くなる)
- 廃業、引退、老齢などの際に「退職金」としてまとまったお金を受け取れる
- 納付12ヶ月以上で、掛金の範囲内で低金利の貸付制度を利用可能
- 国が運営するため、安心感と信頼性が高い
- 一括受取と年金受取(分割)の選択が可能
注意点
- 原則20年以上の加入が望ましい(短期でやめると受取額が減ることも)
- 中途解約すると、掛金総額よりも少ない金額しか戻らない(元本割れ)ことがある
- 原則、廃業または老齢(65歳など)になるまで解約できない
こんな人におすすめ
- 退職金を「まとまった資金」として受け取りたい人
- 毎月1万円程度の余剰資金を積立できる人
- 節税をしながら、将来の安心も得たい人
小規模企業共済は、フリーランスのための“国が用意した退職金制度”といえる安心の仕組み。まず第一に検討すべき制度です。
▶︎この記事もおすすめ!『小規模企業共済の始め方とメリット【美容師向け】』
② iDeCo(個人型確定拠出年金)
どんな制度?
iDeCo(イデコ)は、自分で運用する老後資金の積み立て制度です。毎月掛金を積み立て、そのお金を投資信託や定期預金などで“育てる”ことができます。
60歳以降に年金または一括で受け取れるようになります。
メリット
- 掛金は月5,000円からスタートOK(上限は月68,000円)
- 掛金はすべて所得控除対象(=節税効果大)
- 運用で増えた利益(運用益)にも税金がかからない(=非課税)
注意点
- 原則60歳まで引き出せない(途中解約はできない)
- 投資商品によっては元本割れのリスクがある(定期預金型ならリスクなし)
- 手数料がかかる(月額数百円)
こんな人におすすめ
- 老後資金を積み立てたい人
- 投資に興味がある人/運用して増やしたい人
- 節税しながら将来に備えたい人
長期で積み立てれば複利効果で大きく育つ可能性も!
▶︎この記事もおすすめ!『iDeCo(個人型確定拠出年金)の始め方とメリット【美容師向け】』
③ 積立型保険(個人年金保険)
どんな制度?
生命保険会社が提供する「貯蓄型の保険」です。毎月決まった金額を支払い、一定の年齢(例:60歳)になったら、まとまった金額を受け取れます。
“保険”という形を取りながら、将来のための貯金にもなる制度です。
メリット
- 元本保証の商品も多い(リスクが少ない)
- 満期時にまとまった金額を受け取れる
- 一部の保険は「生命保険料控除」の対象になる(=税金が安くなる)
注意点
- 手数料が高めのケースが多い(保険料の一部が手数料に)
- 運用益は少なめ(利回りは低い)
- 一度加入すると変更しにくい
こんな人におすすめ
- 元本割れを避けたい人
- 運用より「確実に貯める」ことを優先したい人👉 利回りは低めでも、堅実に積立したい人にはアリ。
3. 退職金代わりに必要な金額の目安とは?
フリーランス美容師には「企業から支給される退職金」はありませんが、だからといって退職金の準備をしなくていいわけではありません。老後や引退後に収入がなくなることを想定すると、やはり“退職金相当”の資金を自分で準備しておく必要があります。
では、いくらくらい貯めておくべきなのでしょうか?
参考になるのが「一般企業の退職金平均額」です。厚生労働省の調査によると、大卒正社員の平均退職金は約2,000万円。これをひとつの目安として、フリーランスもその水準をひとつのゴールに考えておくとよいでしょう。
たとえば、生活費が月20万円かかる場合、その10年分=2,400万円が目安になります。ただし、いきなり大きな金額を目指す必要はありません。月1万円の積立でも、20年続ければ240万円。利息や節税メリットを加味すれば、実質300万円以上の価値を生む可能性もあります。
「退職金はないけど、退職金は自分でつくれる」。この視点を持って、今できる範囲からコツコツ準備を始めましょう。
4. 退職金がないからこそ知っておきたい「節税と資金管理」
フリーランス美容師が退職金代わりに積立制度を活用する大きな理由のひとつが「節税」です。
では、なぜ節税になるのか?どのくらい節税できるのか?この章では、その仕組みとメリットを丁寧に解説します。
節税できる理由=「所得控除」の仕組み
小規模企業共済やiDeCoの掛金は、確定申告をすることで「所得控除」の対象になります。
たとえば、あなたの年間所得が400万円だとして、共済に年間30万円を掛けた場合、課税対象となる所得は370万円に減ります。これにより、所得税・住民税の支払い金額も下がるのです。
所得控除は「経費」とは別で使える節税枠なので、どんなフリーランスでも活用できる合法的な手段です。
どれくらい節税できる?具体例で試算!
たとえば年間36万円(=月3万円)を共済に積み立てた場合:
- 所得税:5〜20%
- 住民税:一律10%
→ 合計で年間約6〜11万円の節税効果が得られる計算です。
仮に20年間続ければ、節税分だけで最大200万円以上の“手元に残るお金”が変わります。しかもそれに加えて、積み立てた金額も将来の退職金になるのです。
各制度の節税性と資金流動性を比較
制度名 | 節税効果 | 引き出しやすさ | コメント |
小規模企業共済 | ◎(全額所得控除) | ◯(条件により貸付も可) | 節税+将来の退職金、万能型 |
iDeCo | ◎(掛金控除+運用益非課税) | ×(60歳まで引き出せない) | 長期投資向き、出口での控除も◎ |
積立型保険(個人年金) | ◯(一部控除:最大年4万円程度) | △(中途解約は損の可能性あり) | 保守派向き、流動性はやや低い |
節税だけじゃない「資金の守り方」
節税=“今”得する話。資金管理=“将来”困らない仕組みです。
- 掛金が急に払えなくなったときは?
→ 小規模企業共済は「契約者貸付制度」があり、緊急時に積立金の一部を借りられます。 - 将来まとめて引き出す?それとも年金形式?
→ iDeCoも共済も一括・分割受取を選べるので、生活設計に合わせた出口戦略を立てやすい。
“税金が安くなる+お金が貯まる”という二重のメリットがあるので、知らずに放置するのはもったいない!
👉この記事もおすすめ!『美容師のための確定申告マニュアル|日々の記録から申告まで完全ナビ!』
よくある質問Q&A|フリーランス美容師の退職金対策
退職金対策に関して、実際に多くの美容師さんから寄せられる質問をまとめました。制度が複雑に感じる方も、このQ&Aで不安や疑問を解消していきましょう。
Q1. 小規模企業共済とiDeCo、どちらがいいですか?
どちらも節税効果がありますが、目的とライフスタイルで選びましょう。
- 共済:引退や廃業時の「退職金」として一括で受け取りたい人向け
- iDeCo:60歳以降の「年金」としてコツコツ積立たい人向け
→ 併用もOK(両方で年間100万円以上の節税も可能)
Q2. 掛金が払えなくなったらどうなるの?
- 小規模企業共済は、1年以上の加入で「契約者貸付」が可能です。急な出費や売上減少時の一時資金として利用できます。
- iDeCoは原則停止も可能ですが、引き出しはできません。積立停止=運用資産はそのまま維持されます。
Q3. 月いくらから始めるべき?
- 共済は1,000円からOK。おすすめは月1万〜2万円
- iDeCoは月5,000円から可能。最初は無理せず「少額で習慣化」が正解です。
Q4. 節税ってどれくらい得するの?
- 年間36万円積み立てた場合、税率にもよりますが、年間6万〜10万円の節税に!
- 20年間継続すれば、節税効果だけで200万円前後の差が出ることも。
Q5. 中途解約したら損するの?
- 小規模企業共済:加入期間が短いと元本割れの可能性があります(最低でも6年以上の継続を推奨)
- iDeCo:原則解約できないため、60歳まで使わない前提で設計することが重要です。
Q6. 確定申告が面倒で不安…
- 共済・iDeCoの掛金は、控除証明書が郵送されるのでそれを使えばOK。
- 美容師向けの税理士や会計ソフト(freeeなど)を活用するとラクに対応できます。
5. 今すぐできる「退職金づくり」の始め方
退職金がないフリーランス美容師にとって、将来の備えは“今”から始めることが何より大切です。「難しそう」「時間がない」と思っていても、実は3ステップで簡単に始められます。
ステップ①:月々の生活費と積立可能額を確認
まずは現在の生活費を洗い出し、無理のない範囲で積立額を設定しましょう。月1万円からでも十分。家賃・材料費・サロン使用料・保険などを見直せば、見直し可能な支出は意外とあります。
ステップ②:自分に合った制度を選ぶ
- 節税を最大化したい人→「小規模企業共済」
- 将来の年金として積み立てたい→「iDeCo」
- 元本保証で確実に貯めたい→「積立型保険」
自分の年齢・目標額・リスク許容度で選びましょう。
ステップ③:資料請求 or オンライン申込み
- 小規模企業共済:中小機構の公式サイト
- iDeCo:SBI証券・楽天証券などでネット完結
- 保険型:保険会社またはFP相談サービス
「やらなきゃ」より「やってよかった」と思える未来のために、今こそ一歩を踏み出してみましょう。
6. まとめ:フリーランスでも退職金は「つくれる」!
フリーランス美容師には会社の退職金制度はありません。けれど、国の制度や金融商品を活用すれば“自分で退職金をつくる”ことは十分可能です。
✅ 小規模企業共済で「退職金」代わりの積立
✅ iDeCoで節税しながら老後資金を準備
✅ 保険型で確実に貯めたい人も安心
「いま月1万円の積立」からでもOK。始めるかどうかで、10年後の自分は大きく変わります。
未来の自分を守る準備、今日から始めてみませんか?