美容業界では近年、「アイリストのダブルワーク(副業・複業)」という働き方が急速に広がっています。物価上昇や将来への不安から収入源を増やしたいというニーズに加え、シェアサロンの普及により、個人が低リスクで別の現場を持つことが容易になったからです。
しかし、「時間を増やせば稼げる」と安易に始めた結果、本業サロンとのトラブル、追徴課税、あるいは体力の限界による離職といった「負のスパイラル」に陥るケースも少なくありません。
本記事では、アイリストのダブルワークを成功させるための「稼働配分モデル」から、本業にバレないための税務対策、顧客引き抜きとみなされないための法務知識、そして週30時間モデルを基準とした収益シミュレーションまで徹底解説します。

1. アイリストのダブルワークとは?|2026年の新常識と3つの稼働タイプ
アイリストのダブルワークとは、1つのサロンに依存せず、複数の現場や雇用形態を掛け持ちしてキャリアを築く働き方です。代表的なモデルは以下の3タイプに分かれます。
- 正社員(本業)× アルバイト(副業)型
平日は正社員として社会保険を完備し、週末だけ別の低価格サロンや深夜営業サロンで「給与」として稼ぐモデル。 - サロン勤務(本業)× シェアサロン(フリーランス)型
本業の休日にシェアサロンの1室を借りて、自分個人の顧客を施術するモデル。時給ではなく「売上」が直接収入になるため、単価設定の自由度が高いのが特徴。 - アイリスト × 他業種・講師(複業)型
施術だけでなく、SNS運用代行や美容スクール講師、あるいは全く別の在宅ワークを組み合わせる、身体的負荷を分散させるモデル。
この働き方の最大の利点は「収入源の分散」と「スキル資産の蓄積」です。しかし、成功の鍵は単なる時間の切り売りではなく、「本業と副業の相乗効果」をどう設計するかにあります。
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2. 【最重要】アイリストが知っておくべき副業の法務リスク
「自分の時間なんだから勝手でしょ?」という考えは、副業において最も危険です。特にアイリストは、顧客情報という「サロンの資産」を扱うため、法的なルールを無視すると、損害賠償請求や懲戒解雇に発展する可能性があります。
競業避止義務と就業規則の確認
多くのサロンでは、就業規則に「競業避止(きょうぎょうひし)」の条項があります。これは、在職中や退職後にライバル店で働くことを制限するものです。
副業が許可されている場合でも、「近隣のサロンは不可」「本業の顧客を誘導するのは不可」といった条件がついていることが一般的です。まずは自社の就業規則を隅々まで確認し、曖昧な場合は「相談」という形をとるのが、キャリアを守る賢い選択です。
「顧客の引き抜き」は不法行為になるリスクも
副業先やシェアサロンに本業の顧客を呼ぶ行為は、「不正競争防止法」や「営業秘密の侵害」に抵触する恐れがあります。
- NG: 本業サロンの予約台帳から連絡先をメモし、副業の案内を個別に送る。
- OK: 自身のInstagramで「週末はシェアサロンでも活動しています」と発信し、それを見た顧客が自身の意志で予約を入れる。
法的トラブルを避けるためには、顧客情報は「持ち出す」ものではなく、SNSなどを通じて「自分自身についてきてもらう(セルフブランディング)」という意識が不可欠です。
3. 本業サロンにバレないための「住民税・税務」の裏技
「副業所得が20万円以下なら確定申告不要」という言葉には、大きな落とし穴があります。これは所得税の話であり、住民税には適用されません。
住民税の通知から副業が発覚するメカニズム
副業で少しでも収入を得ると、その情報は自治体に届きます。自治体は「本業の給与」と「副業の所得」を合算して住民税を計算し、その通知を「本業のサロン(給与支払者)」へ送ります。
サロンの経理担当者が「この人の住民税、給料の割に高くないか?」と気づくことで、副業が発覚するのです。
「普通徴収」への切り替えで対策する
これを防ぐ唯一の具体的な方法は、確定申告(または住民税申告)の際に、住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」に選択することです。
これにより、副業分の住民税通知は自宅に届き、本業サロンには合算されません。ただし、自治体によっては給与所得の副業(アルバイト)だと切り替えられないケースもあるため、副業を「業務委託(報酬)」としてシェアサロン等で行う方が、税務上のコントロールはしやすくなります。
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4. 本業×副業の「稼働配分モデル」と収益シミュレーション
アイリストの体力と集中力には限りがあります。無理な詰め込みは施術事故(グルーの目への混入等)を招くため、シビアな時間設計が必要です。
週30時間モデル(安定収益型)の収支試算
本業サロンで週24時間(週3〜4日)、副業(シェアサロン)で週6時間(週1日)稼働する、現実的なモデルです。
| 項目 | 本業サロン(給与) | 副業(シェアサロン売上) | 合計 |
| 稼働時間(週) | 24時間 | 6時間 | 30時間 |
| 客単価 | – | 8,500円 | – |
| 月間売上/給与 | 180,000円 | 102,000円(12名) | 282,000円 |
| 必要経費 | 0円(天引き後) | 35,000円(場所代・材料) | 35,000円 |
| 手取り見込み | 180,000円 | 67,000円 | 247,000円 |
※副業を時給制のアルバイト(時給1,300円想定)で行った場合、月収は約3万円。シェアサロンで高単価施術を行うことで、同じ稼働時間でも手取りが2倍以上変わるのがダブルワークの妙味です。
労働時間の「合算ルール」に注意
法律上、複数の職場で働く場合、労働時間は通算されます。本業で週40時間働いている場合、副業先での労働は原則として「時間外労働」となり、後から契約した副業先が割増賃金を支払う義務が生じます。
これを嫌がるサロンも多いため、副業先を探す際は「業務委託契約」や「面貸し」といった、時間管理に縛られない形態を選ぶのがスムーズです。
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5. アイリストのダブルワークを成功させる「集客・予約」の一元管理
現場が2つになると、ダブルブッキングや顧客対応の漏れが最大のストレスになります。これを防ぐためにデジタルツールをフル活用しましょう。
5-1. 予約導線は「LINE公式アカウント」に集約
「本業の予約はホットペッパー、副業はInstagramのDM」というバラバラな状態は、失客の元です。
全ての顧客にLINE公式アカウントを登録してもらい、リッチメニュー(画面下部のボタン)から、それぞれの拠点の予約ページへ飛ばす仕組みを作りましょう。顧客にとっても「この人に連絡すればいつでも予約が取れる」という安心感に繋がります。
シェアサロン「サロンビレッジ」の活用
副業の拠点として特におすすめなのが、完全個室のシェアサロン「サロンビレッジ(SALON VILLAGE)」です。
- プライバシーの確保: 本業の関係者や他のアイリストと顔を合わせるリスクが低い。
- ブランド構築: 1対1の個室環境は「あなたから受けたい」という指名客を育てるのに最適。
- 固定費のリスクゼロ: 働いた分だけの支払いや月額制など、副業の規模に合わせたプランが選べる。
6. アイリストのダブルワークで失敗する人の共通点と対策
「時間を増やしたのに、なぜかお金が貯まらない」という人は、以下の3つの落とし穴にはまっています。
- 移動コストの無視
副業先が遠いと、往復2時間の移動は「無給の労働」です。移動時間を含めた「実質時給」を計算し、自宅や本業サロンから30分以内の拠点を選びましょう。 - 経費のどんぶり勘定
材料費、交通費、通信費、そして「確定申告のための事務時間」。これらを引いて利益がいくら残るかを1円単位で把握してください。 - セルフケアの不足
アイリストの職業病である「腱鞘炎」「腰痛」「眼精疲労」。ダブルワークで身体を壊して本業を休めば、大赤字です。副業の翌日は必ず「メンテナンス日」として、マッサージや休息をルーチンに入れましょう。
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まとめ|アイリストのダブルワークは「設計」が9割
アイリストのダブルワークは、単なる小遣い稼ぎではありません。それは、自分のブランドを試し、将来の独立に向けた「軍資金」と「顧客」を蓄えるための戦略的なステップです。
「時間設計」「税務管理」「法務リスクの回避」。この3つを正しく設計できれば、あなたは「サロンに雇われる職人」から「自分の価値を複数の場所で提供できるプロフェッショナル」へと進化できます。
まずは、自分の本業サロンの就業規則を確認すること、そして、副業の拠点として最適な環境をリサーチすることから始めてみてください。2026年、あなたのキャリアは、もっと自由で、もっと豊かになれるはずです。
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