「利益は出ているのに手元に残らない…」そんなジレンマを抱えるスタイリストが今選ぶのが “1人美容室” という独立形態です。
人件費ゼロ・席数2面以下・平均客数月40人──このミニマム設計でも年収600万円を狙えるのが最大の魅力。しかし成功のカギは “資金計画” と “回収シナリオ”。資金をかけ過ぎればの黒字化は遠のき、逆に削り過ぎれば内装や集客で後悔します。本ガイドでは 開業スタイル別のリアル費用・4 つの調達ルート・黒字オーナー3事例 を徹底解説。数字でリスクを見積もり、最短であなたのサロンをスタートさせましょう。
サロウィンではフリーランス美容師のためのシェアサロンだけでなく小規模〜大規模まで美容室経営のトータルサポートサービスを提供しております。 ご相談だけでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。 |
“1人美容室”が増える3つの理由
1人美容室とは、一般的なサロンのようにスタッフを雇うのではなく、美容師が1人で運営する小規模な美容室のことを指します。施術はもちろん、予約管理や掃除、経理、集客まで、すべてを自分ひとりで運営していくことです。
注目されている理由としては、自由度の高さと利益率の良さが最大の魅力となります。
スタッフを雇わない分、人件費がかかることがなく、固定費を最小限に抑えられ、少ない売上でもしっかり利益を残すことができます。
また、理想空間やサービスの方向性を自己判断でき、自分自身がサロンの顔であり、オーナーでもあるということになります。
選ばれている3つの背景
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1人美容室の開業資金は「実質いくら?」
1人美容室の開業する一般的な初期費用の目安は、500万〜1,000万円程必要な資金と言われていますが、誇張ではなく、「自分の理想を全て詰め込んだ場合の上限値」ということです。
開業スタイルによってかける金額が違うため、いくら費用がかかるか把握しておくことが重要となってきます。
開業スタイル別3選
開業スタイル | 投資額 | 坪数(目安) | 投資回収目安* | 内容 |
① ミニマム開業 (DIY+居抜き) |
150〜250万円 | 6〜8坪 (1~2席) |
6〜12か月 | 中古設備/DIY内装/最低限の機材/物件小さめ |
② スタンダード開業 (最低限以上のクオリティ) |
250〜500万円 | 9〜12坪 (2~3席) |
12〜18か月 | 物件取得+内装一部外注/設備は新品・中古ミックス/10坪前後 |
③ こだわり開業 (フルリノベ+高級設備) |
500〜1,000万円 | 12〜20坪 (3~4席) |
24〜36か月 | フル内装工事/新品シャンプー台・什器/空間デザインにこだわり |
*投資回収目安は客単価・客数・固定費により変動します。
💡ポイント
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開業資金の4大調達ルート
1人美容室の開業に、なるべく自己資金だけで開業したいと思うかもしれませんが、現実的には不可能に近いです。
そこで活用したいのが、公的融資や補助金、クラウドファンディングなどの「外部資金」を利用することで、美容室の開業に必要な資金の一部をカバーすることができます。
方法としては、以下のような4つの資金調達手段があります。
① 自己資金の準備(目安:開業資金のうち120万〜400万円程度)
まず最初に必要なのが、「自己資金」=自分で用意するお金が必要になります。美容室の開業資金全体を500万〜1,000万円程度と想定した場合は、おおよそ約150万〜500万円(全体の30〜50%)を自己資金として確保しておくと、融資や補助金の審査でも有利になりやすいです。
注意すべき点としては、自己資金=ただのお金ではない。という認識をすること。外部資金を活用する予定がある場合、審査に通過するための材料となります。
② 公的融資制度(=国が資金面でサポートする“開業支援ローン”)
公的融資制度の金融機関で、「日本政策金融公庫」が提供している新創業融資制度という「これから創業する人」や「創業して間もない人」向けの融資制度があります。
この制度は「民間の銀行よりも審査が柔軟」「金利が低い」「無担保・無保証でも利用できる」といった特徴があり、特に美容室のように初期投資が必要な個人事業には、とても心強い存在です。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の特徴
- 個人保証・担保が不要なケースがある。ただし、条件あり(代表者の連帯保証や信用情報など)
- 融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)。借入額は、内装費+物件取得費+広告費+6ヶ月分の運転資金を基準に見積もるといいでしょう。
- 金利:実際の金利は申込者の内容や時期で変動する(2.0%前後が多い)基準利率。
- 返済期間:設備資金は20年、運転資金は10年以内
- 必要書類:事業計画書・返済計画書・自己資金証明、見積書なども求められる
現実的で計画性のある、事業計画書が重要となるので、経験者や専門家、プロに相談してみるのが1番ですね。
👉 公庫についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
③ 補助金・助成金(返済不要の支援制度を賢く活用)
美容室を開業する上で、自己資金や融資だけでは不安…という方も多いはずです。そこで、国や自治体が開業や事業成長を後押しするために提供している「補助金・助成金」という制度があります。
これらは返済不要の資金支援として支給されるため、条件が合えば積極的に活用したい資金調達の選択肢のひとつです。
ただし、以下のような特徴があるため、しっかり準備してから申請する必要があります。
- 審査がある(=誰でも必ずもらえるわけではない)
- 後払いが基本(先に自己負担で支払う必要がある)
- 書類の準備や手続きがやや煩雑
特に、申請には見積書・事業計画書・導入計画などの書類提出が必要になるため、
不安がある場合は地域の創業支援窓口や税理士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
④ クラウドファンディング
別の選択肢として、クラウドファンディングで“共感”を通じて資金を集める、現代ならではの資金調達手段があります。これはインターネット上で「こんな美容室を作りたい」という想いや計画を発信し、共感してくれた人たちから資金を集める仕組みです。
また、SNS(InstagramやX)などでのつながりがある人ほど、支援が集まりやすくなる特徴があり、支援額の目安としては、50万〜150万円ほど集まった事例も。
加えて、クラウドファンディングで資金調達をしながら、「開業前からファンをつくれる」というメリットが生まれます。
クラウドファンディングサービスには以下のようなものがあります。
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
- Makuake(マクアケ)
- Readyfor(レディーフォー)
低資金で“席数 2–3”のサロンを最短1 か月で──【me by,,】活用ガイド
出店パターン | 初期費用* | 保証金 | オープンまでの期間 | 向いている人 |
通常出店 | 500 万〜1,000 万円 | 家賃 6〜10 か月分 | 3〜6 か月 | 内装にこだわりたい/広さ10坪以上 |
me by,, | 55万円~ ※保証金1.5 か月+初月家賃のみ、 料金はエリアによって異なります |
家賃1.5 か月 | 最短1か月 | リスクを抑えて小規模で出店したい |
me by,, は “開業資金を極力抑えながら、自前サロンのブランドを育てたい” スタイリスト向けの入口として最適です。
「資金がしっかり貯まってから出店しよう…」「良い物件が見つかったら出店しよう…」はもったいないです。リスクを抑えてコンパクトに始められるので、数字を固めてから一気にステップアップしたい方は、選択肢に入れてみてください。
1人美容室のメリットとデメリット
1人美容室のメリット
①利益率が高い(人件費ゼロ)
スタッフを雇わず1人で運営するため、固定費がぐっと抑えられ、売上がそのまま利益になりやすく、少ない売上でも十分生活できる収益が得られるのが強み。
②自分の世界観や技術を100%表現できる
内装、サービス、接客スタイル、価格設定などの全てを理想通りにすることが可能なため、技術や得意分野に集中でき、自分だけのブランディングが可能。
③時間の使い方が自由で柔軟
営業時間や定休日を自分で決められるので、家庭や趣味との両立もしやすく、体調や状況に応じた調整も可能で、働き方の自由度がとても高い。
④顧客との距離が近く、リピート率が上がる
お客様と1対1の丁寧な接客ができるため、顧客満足度が高く、信頼関係も築きやすい。結果的にリピーターが増え、安定した経営につながる。
1人美容室のデメリット
❶体調不良=収入ゼロのリスク
1人美容室は、自身が休む=サロンの営業が止まるため、病気やケガでの休業中は売上がゼロになる場合も。そのため、個人事業主向けの就業不能保険の加入や、生活費の積立で補う必要性がある。
❷すべて自分でやる必要がある(超・多忙)
施術だけでなく、集客・SNS更新・予約管理・経理・在庫管理・掃除まで、サロン全業務を1人で対応しなければならない。時間効率が重要となる。
経理作業に関しては税理士を雇い、効率化することもおすすめです。
❸予約が集中すると回転効率が落ちる
マンツーマン施術のため、同時に複数のお客様を見ることは物理的に難しいことも。施術時間が延びると次の予約に影響が出てしまい、失客につながることも。
❹売上の上限が明確
席数・時間・体力には限界があるため、月間売上には物理的な上限がある。そのため利益を増やすには、客単価UP・物販・メニュー戦略を変更していく必要性がある。
❺孤独になりやすい(相談相手がいない)
悩みや課題を共有できる同僚が身近に相談することができない。特にトラブル対応や経営判断に迷う場面では精神的負担が大きくなる場合がある。
❻技術・情報のアップデートが自己責任
新しい技術やトレンド情報を得るには、自発的にセミナー参加や勉強を続ける必要がある。身近に技術や知識を教えてもらえる環境下ではないため、自走力が求められる。
開業後に欠かせないコスト&資金管理
・固定費の見直しを定期的に行うこと
家賃、水道光熱費、材料費などは毎月発生する費用のため、一人美容室の場合は無駄な支出がそのまま利益を圧迫します。そのため、自宅サロン化や仕入れの工夫が効果的となります。
・税金・社会保険料に備えた積立を行う
開業初年度は税金の支払いが少なく、2年目以降に課税分の支払いが一気に発生します。そのため、毎月数万円ずつ支払いに備えた積み立てをしておくと安心。
・売上減に備えた運転資金の確保
突発的な病気や予約キャンセルなどの変動に備え、最低6ヶ月分の固定費相当をストックしておくのが理想的。
・見落としがちな細かいコストにも注意
レジアプリの月額利用料、キャッシュレス決済手数料、スマホ・Wi-Fiの通信費、印刷代など、積み重なるといつの間にか大きな負担になる。小さなコスト費のチェックを。
・経営数字に強くなる意識を持つ
利益率や原価率を把握すること。感覚ではなく数字で経営判断ができるようにしておく。
よくある質問(Q&A)
Q.自己資金がなくても開業はできますか?
→「自己資金ゼロ」でも絶対NGではないが、かなりハードルは高い。
記事冒頭でお伝えしたとおり、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、「自己資金が少ない方にも門戸を開いています」と公式にも記載されており、自己資金ゼロでも申請自体は可能です。
しかし、実際には:
- 審査で自己資金の有無はかなり重視される
- 自己資金ゼロの場合、「計画の甘さ」「リスク意識の低さ」と捉えられることも多い
つまり、ゼロでも融資が出る可能性はあるが、審査が通る確率は狭き門と言えます。
Q:開業後すぐに黒字化するには?
→開業初月から黒字を出すためには、事前の戦略が非常に重要であり、簡単なことではありません。
地域によって個人差はありますが、一人美容室の場合、早い人で3ヶ月、平均では6〜12ヶ月以内に黒字化しているケースが多いです。
今後美容室の開業を考えている方は、6ヶ月〜1年以内が黒字化する目安と考える方がよいでしょう。
Q. 一人美容室は法人化すべきか?
→慎重に判断しましょう。一人美容室で、月の売上が安定して100万円を超えてきたら、法人化をしようか考えるでしょう。 実際のところ、年商1,000万〜1,200万円を超えたあたりで法人化を選ぶ美容師オーナーも増えています。
その理由は、法人化によって給与を経費にできたり、家族を役員にして所得分散ができるなど、節税面でのメリットが得られるからです。
また、事業展開の幅が広がり、選択肢が増えることも大きな利点です。
法人化のタイミングとして検討したい目安
- 売上が年間1,000万〜1,200万円以上ある
- 今後スタッフを雇う予定がある
- 店舗を増やしたり、事業展開を広げたい
- 融資・物件契約・信頼性を重視したい
一方で、法人化をすると会計処理や税務が複雑になり、税理士との契約が前提になり、その分のコストや手間が増えることも理解しておく必要があります。
つまり、「節税になるから」という理由だけで安易に法人化するのではなく、自分の事業スタイル・今後のビジョン・経営の安定性などを踏まえて、慎重に判断するのがベストです。
法人化すべきかどうかで迷ったら、商工会・創業支援センターや税理士などに相談して判断するといいかもしれません。
👉 美容室の法人化についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック!
まとめ──“理想”を“現実”に変えるのは数字
1人美容室の開業は、自分の理想の働き方を叶えられる魅力的な働き方です。利益率の高さや自由な時間設計、自分らしい空間づくりなど、自身の理想を叶えられる多くのメリットがあります。
一方で、すべてを自分ひとりで美容室を運営していく責任が伴い、資金・経営・集客・制度対応など、準備しておくべき項目が多くあります。
とくに、開業資金は自身の理想空間や立地によって、150万〜1,000万円と大きな資金幅があり、自己資金だけでまかなうのは難しい場合がほとんどです。
そのため、公的融資や補助金、クラウドファンディングなどを上手に組み合わせることで無理のない現実的な美容室の開業をすることができます。
ただし、開業してから黒字化の目安は開業から半年〜1年。その期間で事業計画書と融資資金が予定通りに運営していけるかどうかが成功を左右するポイントとなります。
大切なのは、理想だけで突き進むのではなく、現実を見据えて、まずは「美容室の開業は何が必要でいくらかかるか」を細かく明確にすることです。
1人美容室の開業を検討している方は、税理士や開業支援の専門家に相談するようにしましょう。
サロウィンではフリーランス美容師のためのシェアサロンだけでなく小規模〜大規模まで美容室経営のトータルサポートサービスを提供しております。 ご相談だけでも構いませんのでお気軽にお問い合わせください。 |