「居抜き物件」を活用したサロンの独立開業。開業資金を抑えられ、スピーディにスタートできるという利点から、多くの美容師が居抜き物件を選択肢に入れています。
しかし、実際にサロンの居抜き物件で開業する方法が資金を抑えられるか、契約条件や設備の状態、内装改装費など、見落としがちなポイントが多数あります。
この記事では、美容師さん向けにサロンの居抜き物件の実態と成功・失敗事例、契約時の注意点をできるだけわかりやすくまとめました。
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居抜きサロンって何?
サロンの「居抜き物件」とは、以前に美容室が営業していた物件を、そのままの設備や内装が残っている状態で引継ぎ、契約・開業する形態のことです。
また、 シャンプー台やセット面、照明、給排水設備、空調など、美容室に必要な環境がすでに整っているため、ゼロから内装工事をする必要がありません。
つまり、一般的な新装サロンでは、内装・設備工事に500万〜1,500万円以上かかることもありますが、居抜きならおおよそ150万〜500万円で初期投資を抑えることができます。
さらに、最短1〜2ヶ月でオープン可能です。このように、「居抜きサロン」は時間とコストを大幅に削減できるので、開業手段として美容師から人気があります。
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居抜き物件の特徴や基本的要素
居抜きでサロンを開業を考える場合、大きく3つの要素があります。
以前のサロンオーナーの場合によっては、3つのうちの1つ条件がなくていい場合、逆に増やされる場合が稀に起こりますが、基本的な内容は以下の通りです。
①造作譲渡費
造作譲渡費とは、前のテナント(美容室オーナー)が残していった設備や什器を買い取るための費用です。
シャンプー台・セット面・鏡・照明・給湯器・エアコンなど、開業に必要な設備が一式揃っていることが多く、それをまとめて「造作」と呼びます。
造作譲渡費の相場は、おおよそ50万円〜200万円で、物件の立地、設備の状態、築年数、ブランド力などによって金額が大きく変わってきます。
また、費用は一律ではないため、金額の交渉が可能かどうかも重要となります。設備が古かったり、修理が必要な場合には減額交渉できるチャンスとなるので、確認しましょう。
②内装維持
居抜き物件では、天井・壁・床のデザインや配色、仕切りのレイアウトなどがすでに完成されているため、ゼロから内装設計をする必要がありません。
そのため、デザインの手間や費用を大幅に省ける点が魅力です。
ただし、自分のブランドイメージと合わない部分があれば、部分的なリフォーム(ペイント変更・照明追加など)を加えることで対応できます。
大規模な改装が不要な分、コストと時間の節約が可能になります。
③工期の短縮
新築・新装サロンの場合、物件選定から設計、施工、検査までに通常3〜6ヶ月以上の時間がかかります。
一方で、居抜きサロンであれば、最低限の調整だけで済むため、早くて1〜2ヶ月以内の開業が可能です。
これは、すでに指名顧客を多く抱えている美容師にとっては、非常に大きなメリットであり、売上のブランクを生まずに次のステージへ移行できます。
居抜きサロンのメリットとは
居抜きサロンには、以下のような多くのメリットがあります。これらのポイントを押さえておけば、開業時に大きな利点となります。
①実際の営業導線がイメージしやすい
居抜き物件は、すでに美容室として使用されていた空間です。セット面の配置やスタッフ、お客様の動線が見えるため、ゼロからレイアウトを考える手間が省けます。
②設備インフラが整っている
シャンプー台や照明、給排水設備が整っているため、新たな工事の必要が少なく、即営業が可能です。
③必要な箇所だけリフォームできる
ブランドイメージに合わせて部分的にリフォームできるため、低コストで空間を整えられます。
④初期費用が低く、融資にも有利に働く
居抜き物件では内装工事や設備導入の費用が少なくて済むため、初期費用を大幅に抑えることができます。
さらに、設備が整っている分、開業までの準備期間が短縮され、早期に売上を上げやすいのもメリットです。これにより、融資審査においても「早期の収益化」が見込める点がプラス評価されることがあります。結果として、融資の通過率が上がったり、返済負担も軽減されたりする可能性があります。
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⑤オーナーから経営情報を聞ける場合がある
前オーナーから、物件周辺の年齢層や集客に関するデータを直接得られることがあり、今後の戦略に大きく役立ちます。
⑥人気エリアでも手が届く可能性がある
人気エリアでの開業も、居抜き物件を選べば初期投資を抑えつつ実現できるチャンスがあります。
居抜き物件の最大の利点は、初期費用を抑えつつ、素早く営業を始められる点です。これにより、早期に収益を上げることができ、開業リスクを低減できます。
居抜きサロンのデメリット・見落としがちな注意
サロンの居抜き物件は、コストやスピード面で多くのメリットがありますが、同時に見落としやすいデメリットやリスクも存在します。
開業後、後悔しないために確認すべき内容をまとめました。
①設備の老朽化による修繕リスク
居抜きサロンの設備は「現状渡し」であるため、事前に設備の状態を確認しておくことが非常に重要です。設備が古く、すぐに修繕が必要な場合、最初に予想していたコストより高くつく可能性があります。
特に、シャンプー台や排水設備など、美容室の運営に不可欠な部分での不具合は大きな問題になります。
また、居抜き引き渡し後に不具合が出ても修理代はすべて自己負担となります。「居抜き=安い」という思い込みだけで判断すると、結果的に新築・新装より高くついてしまう場合も。
そうなることを防ぐためにも、契約前に専門業者と一緒に内見し、状態をしっかりチェックするのが重要です。
②内装に自由が効かず、世界観を出しづらい
サロンの居抜き物件では、内装がすでに完成している分、理想のサロン空間を1から作り込むことが難しいケースもあります。
また、既存の色使いや素材感に左右されるため、ブランディングに制約が出ることがあります。部分リフォームで対応可能なこともありますが、全体の統一感を出すには工夫が必要です。
③ 原状回復義務や造作譲渡契約に要注意
居抜き物件の契約時に「原状回復義務」について十分に確認していないと、後々高額な撤去費用が発生するリスクがあります。特に、スケルトン(完全撤去)に戻す義務がある場合、予期せぬ追加コストが発生する可能性があります。
契約書を詳細に読み、原状回復義務がどのように設定されているかを必ず確認することが重要です。専門家(弁護士や宅地建物取引士)に契約内容をチェックしてもらうのが理想的です。
④契約期間が短くなる可能性がある
居抜き物件は、前のテナントが途中で退去した「残契約期間のある物件」が多いです。
たとえば、元々5年契約だった物件が、すでに3年経過していれば、残り2年だけの契約になるケースもあります。
このような場合、更新時に賃料が上がったり、立ち退きを求められるリスクがあります。短期間で再移転となれば、せっかくかけた内装や広告などの費用を回収できないまま撤退せざるを得ない残念な結果になることも。
契約前には「現在の契約年数が何年残っているか」「更新時の条件変更があるか」を必ず確認しましょう。
⑤造作の再販・譲渡が制限される場合がある
サロンの居抜き物件では、設備や内装を造作として譲り受けますが、退去時にそれを次の人に売れない=再譲渡禁止の契約になっている場合です。
このような制限があると、将来の売却益を見込んでいた設備がまったく資産にならず、撤去費だけがかかる結果にもなりかねません。高額なシャンプー台やセット面を自腹で撤去することになれば、大きな損失です。
契約前に「造作の再譲渡は可能か?」「退去時の扱いはどうなるか?」を必ず確認しましょう。
居抜きサロン vs 新装:費用比較と判断基準
自己資金や融資の通りやすさ、開業スケジュールの希望、理想の空間にどれだけこだわるか。「居抜きか?新装か?」という選択は、自身の条件に合わせて比較・判断することが大切です。
無理のない資金計画と、現実的な準備スケジュールを描くために、まずはこの費用・期間の違いを正しく理解しましょう。
※データ出典:2023年 美容室開業コスト調査(都内18店舗対象)
項目 | 居抜き | 新装 |
内装工事費 | 50万〜300万円 | 800万〜1,500万円 |
設備代(シャンプー台等) | 0〜100万円 | 300万〜600万 |
開業までの期間 | 1〜2ヶ月 | 3〜6ヶ月 |
初期費用の相場 | 100万〜500万円 | 1,000万〜2,000万円 |
判断基準 | 居抜きが適している場合 | 新装が適している場合 |
初期費用を抑えたい | ◯ | × |
開業までのスピード | ◯ | × |
内装や設備にこだわりたい | × | ◯ |
ブランドイメージを重視 | × | ◯ |
資金調達の余裕がある | × | ◯ |
契約時にチェックすべき5つのポイント(初心者向け)
居抜き物件でサロンを開業する際は、「契約書をよく読むだけでは不十分」です。高額な修繕費やトラブルに巻き込まれないためにも、以下の5つのポイントを事前に必ず確認しましょう。
1. 原状回復義務の条項
退去時に「物件をスケルトン(内装をすべて撤去した状態)に戻す必要があるかどうか」は最重要ポイントのひとつです。
また、原状回復義務が重い場合、撤去費用だけで100万円以上かかる場合もあります。契約書に“スケルトン返却”や“原状復旧”の記載がある場合は、条件を明確に確認しましょう。
2. 設備の保証有無と状態確認
居抜き物件の設備(シャンプー台・給湯器・空調など)は基本的に「現状渡し」です。
つまり、引き渡し後に不具合があっても自己負担になる可能性が高いです。プロの内装業者や水道・電気の専門業者と一緒に内見し、設備の劣化や寿命を事前にチェックしましょう。
3. 造作譲渡契約の明文化
造作譲渡費(内装・設備の買い取り費用)については、口頭ではなく必ず書面で契約内容を明記してもらいましょう。
「いくらで何を譲渡するのか」「退去時に譲渡した設備の扱いはどうなるのか」「所有権は誰にあるのか」などをクリアにしておくことで、後々のトラブルを防げます。
4. 前テナントの解約理由・業績の確認
その物件で以前営業していた美容室が「なぜ退去したのか」は非常に重要な情報となります。解約理由によって、その物件の将来性も見えてきます。
可能であれば、全オーナーに過去の売上や集客の傾向も確認しておきましょう。
居抜きサロン物件の探し方
① 居抜き物件専用のサイトを活用
まずは「居抜き物件情報.COM」「サロン不動産ネット」など、サロンや飲食業向けに特化した居抜き専門サイトをチェックしましょう。設備付きの物件が中心に掲載されており、地域・坪数・価格帯などの条件から検索が可能です。写真付きの掲載が多く、イメージもしやすいため、初めての物件探しにも向いています。
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②美容ディーラーからの非公開物件紹介
意外と知られていないのが、美容ディーラーが持っている水面下の物件情報です。
サロンが閉店・移転する情報は、まず取引先のディーラーに共有されることが多く、一般に出回る前のタイミングで紹介してもらえるケースがあります。
また、付き合いのあるディーラーがいれば、日頃から「いい物件が出たら教えてほしい」と相談しておくと、チャンスが広がります。
③地元不動産会社に直接足を運ぶ
大手ポータルに掲載されていない地域密着型の物件を探すには、実際に現地の不動産会社を訪ねて相談するのが有効です。
また、美容室用途の経験がある担当者なら、スケルトン予定の物件や閉店予定の情報を先回りで持っている場合もあります。
オリジナルな内装にするには?
居抜き物件でも、“自分らしいサロン”を演出することは十分可能です。内装を全て作り変えなくても、ちょっとした工夫で空間の印象は大きく変わります。
まず効果的なのが、ミラーやセット椅子、照明の変更です。たとえば、木製フレームのミラーに変えるだけで、ナチュラルで温かみのある空間に。椅子の色や形を統一するだけでも、デザインにまとまりが生まれます。
次に、壁の一部にペイントやアクセントクロスを使うことで、低コストで印象的な空間が作れます。サロンロゴや看板デザインも工夫すれば、ブランディング効果もアップ。
さらに、香りや音楽といった「五感に訴える要素」も重要です。アロマの香りやお店の雰囲気に合ったBGMを流すだけで、印象に残る空間に仕上がります。
つまり、居抜きでも“全改装なし”でオリジナリティは出せるのです。予算に合わせて少しずつ変えていくのがポイントです。
よくある質問(Q&A)
Q.居抜き物件で「造作譲渡費」が高すぎると感じた場合、値下げ交渉は可能?
→ 可能です。相場を把握した上で「修繕が必要な部分」「築年数」「使用年数」などを根拠に交渉しましょう。不動産業者やディーラーが間に入っている場合、プロの視点から適正価格のアドバイスが得られます。
Q.居抜きの設備に保証はある? ない場合はどうすれば?
→ 原則、保証がないことが多いです。契約前に第三者の設備業者と内見に行き、稼働状況をチェックしてもらうことを推奨します。重要な設備については契約時に「現状有姿であること」「瑕疵責任の有無」を文書化しておくと安心です。
Q.居抜き物件を探し始めるベストなタイミングは?
→ 開業希望日の「6ヶ月前」から動き始めるのがベスト。人気エリアではすぐに埋まるため、希望条件に優先順位をつけ、情報収集と並行して資金計画も進めておくことが重要です。
居抜き物件を選ぶ際の最も重要なポイントは?
→「設備の状態」と「契約条件」が最も重要です。設備の老朽化や修繕が必要な場合、事前に確認して交渉することが重要です。
居抜きサロンは「安さ」だけじゃなく“戦略”として考えよう
サロンの居抜き物件は、内装や設備があらかじめ整っているため、初期費用を抑えて短期間で開業できる方法として、多くの美容師から注目されています。
とくに、資金に限りがある方や、スピーディに独立したい美容師にとっては、有力な選択肢です。
一方で、「設備の老朽化」「契約条件のトラブル」「造作譲渡の制約」など、事前に確認しておかないと後悔するリスクもあります。「安かったから」「なんとなく良さそうだから」といった理由で決めてしまうと、結果的に新装以上のコストや負担を背負ってしまう可能性もあるのです。
大切なのは、「自分がなぜ居抜き物件を選ぶのか?」という目的や開業スタイルを明確にしたうえで判断すること。
そのうえで、契約内容や設備の状態をしっかり確認し、不安があれば内装業者や不動産の専門家に相談することが成功への近道になります。
サロンの居抜きは、美容師にとって「上手に使えば、独立を後押ししてくれる強力な手段」です。
ただし、戦略的な選択として使わなければ、かえって足を引っ張る存在にもなりかねません。
まずは、
- 自分のサロン運営スタイルに合っているか?
- 契約条件にリスクはないか?
この2つをしっかり見極めるところから始めましょう。
不安がある場合は、美容業界に詳しいディーラーや開業支援の専門家に早めに相談するのが安心です。
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