美容師としての経験を重ねるなかで、「このままでいいのだろうか」と考えたことのある方も多いのではないでしょうか。特に、フリーランスという働き方に興味を持ちながらも、環境の変化や集客への不安から、一歩を踏み出せずにいる美容師の方も少なくありません。
そんな悩みを持つ方に向けて、今回はシェアサロンSALOWIN新宿三丁目East店6Fで活躍するフリーランス美容師 矢部貴史さんにインタビュー。
本記事では、エリア移動による失客リスクと向き合いながら、顧客維持と単価アップを実現したリアルな経験やエリア移動のメリットをお届けします。
「フリーランス美容師になりたいけれど不安」と考えている方にとって、背中を押してくれるはずです。
フリーランス美容師のキャリアの始め方|独立の決断と不安のリアル
ーフリーランス美容師に興味を持ったのは、いつ頃でしたか?
これまでに2社経験し、2社目は池袋のサロンで業務委託として働いていました。
2社目のサロンを選んだ理由は、1社目の先輩からの誘いです。元々、つなぎとして入る予定でしたが、自分の性格には正社員サロンよりも業務委託サロンが合っていると思い、気づいたら3年半ほど働いていました。
フリーランス美容師の働き方に興味を持ったのは、5年ほど前で、SNSなどで見かける機会も多く、自然と関心を持つようになっていました。
ただ、僕は自己集客の不安から、なかなか一歩踏み出せずにいました。自分のお客様は、順調に増えていましたが、フリーランス美容師は新規集客に苦戦するイメージが強かったことが、ブレーキになっていました。
ーそんな中でフリーランス美容師への一歩を踏み出し、SALOWINを選んだ理由は何ですか?
大きな理由は、池袋のSALOWIN が、予約管理ツールとしてですが、HOT PEPPER Beautyできることが大きな理由でした。
元々HOT PEPPER Beautyを使っていて、いきなりなくなることは不安だったため安心材料の一つになりました。
また「フリーランス美容師のシェアサロンといえばSALOWIN」という、ブランドとしての知名度があったことも信頼できるポイントでした。実際に働き始めてからも、イメージとのギャップがほとんどなく、スムーズに馴染めたことを覚えています。

フリーランス美容師がエリア移動で顧客維持に成功|新宿での働き方と売上変化
ーSALOWIN池袋店から新宿三丁目East店への移動を決断した背景を教えてください。
フリーランス美容師として半年が過ぎたころ、新しい環境に自分の身を置いてみたいという気持ちが芽生えたことがきっかけです。
30代を迎え、自分のサービスのクオリティを見直したいと思ったことも、大きな理由でした。
池袋には愛着がありましたが、離れてみることで、お客様にさらに良い提案や技術提供ができるのではないかと考えました。
ーエリア移動は、大きな挑戦ですね。
もちろん、賭けだったとも思います。
お客様がどれくらいついてきてくださるかもわからない状態でしたが、そのことも含めて知りたいと思ったことも事実です。エリア移動によりある程度売上が減る覚悟をしたうえで前向きに捉えて決断しました。
ーお客様にはエリア移動についてどのように伝えられましたか?
12月中旬にエリア移動を決めたため、準備期間は2週間ほどでした。お客様一人ひとりに丁寧にLINEからメッセージを送り、「新しい挑戦をしたい」「技術力を高めたい」という想いをしっかり伝えました。
文面については「今回の決断理由は、すべてお客様のため」という姿勢が伝わるよう、意識してご連絡しました。
―エリア移動をした結果、お客様は今、どれくらい来てくださっていますか?
新宿へ移動した直後の1月・2月の売上は落ち込みましたが、4月頃から回復しました。現在は、9〜10割のお客様が新宿まで来てくださっています。
移動前の売上は、大体90〜100万くらいだったのですが、移動後の1〜2月は、65万ぐらいになり、少し焦りが生まれました。
ただ、最初から「失敗した…」と思うのではなく、「半年は様子を見よう」と決めていため、特に何か違うことを行ったりせず、あえて待つことを選びました。
お客様が来なかったら仕方がない、来ていただけなかったのは自分の実力不足だと考え、戻ってきてくださったお客様に対し、精一杯の技術を提供しようと改めて感じました。
もし、半年経っても戻ってきてくださらなければ、違う手を打とうと考えていました。ただ、結果的にほぼすべてのお客様が戻ってきてくださり、焦らず待つことができて良かったと感じています。
ーエリア移動のメリット・デメリットについてもお聞かせください。
新宿三丁目East店は立地的にも落ち着いた雰囲気があり、池袋エリアと比較して美容意識の高いお客様が多い印象です。伊勢丹の横にあることも大きいポイントかもしれません。なので移動によるデメリットは、今のところ感じていません。
むしろ「技術をしっかり評価してくれるお客様」との出会いが増えたことは、エリア移動は僕にとって大きな収穫でした。
ー顧客維持のために意識していることは何ですか?
一番大切にしているのは、次回来店の提案を必ず行うことです。
また、髪質改善などのメニューを通して、お客様と一緒に“髪を育てていく”感覚を共有するようにしています。
前回より「髪質が良くなった」「扱いやすくなった」と実感してもらえることは、信頼関係につながると感じています。そうした積み重ねが、「また来たい」と思ってもらえる理由になっていると感じますね。
ー現在の単価はどれくらいですか?
現在は、¥13,000前後です。
4年前はカット・カラー・トリートメントで¥8,000程度、業務委託サロン時代はカットで¥7,000ほどだったので、フリーランス美容師になって大きく上がりました。
ー単価を上げる工夫についても教えてください。
以前のサロンではケミカルや毛髪科学に力を入れていたため、僕も知識を活かして専門的なカウンセリングを行っています。
単なるヘアスタイル提案に留まらず、“髪の先生”としての立場で寄り添うことで、お客様にも日常のケアに意識を持っていただけるようになりました。
トレンドである「髪質改善」というワードも活用しながら、価値をしっかり伝えるようにしています。
ー高単価メニューは、どのようなタイミングで提案していますか?
1店舗目では、初回トリートメントを¥1,000程度でお試しいただき、効果を実感していただいたら、次回以降、本来の価格といった形につなげていました。
最初は来店してくださるお客様への感謝という金額で提供する仕組みも良かったと思います。
今後の価格については、段階的に上げるようなやり方はしたくないという気持ちもあります。ただ、お客様にとってご負担にならないように、タイミングを見ながら「次回から価格が変わるかもしれません」と、少しずつお伝えするようにしています。

フリーランス美容師のキャリア形成術|単価アップとスキル成長のための環境選び
ー今後の展望について教えてください。
独立や自分の店を持つことよりも、まずはSALOWINという環境で自分の限界値を見極めたいと思っています。
SALOWINは、スタッフの交流も活発で、技術力の高い方が多く、自分にとってすごく刺激のある環境です。
だからこそ、今はこの場で自分がどこまで売上や単価を伸ばせるかに集中したいですね。日々の会話や共有から得られる学びも多く、自身の成長をこれからも追求していきたいです。
ーフリーランス美容師を目指す方へメッセージをお願いします。
フリーランスは、すべてが自己責任です。
ただ、すべては自分次第であり、自分の時間を持つことができ、頑張り次第で給料が上がる働き方だと思います。
リスクもありますが、それ以上に「自由」と「目標の実現」が得られる仕事だと思います。
自分に自信がある方は、思い切って飛び込んでみるのもいいと思います。
不安はあって当然です。
ただ、その先には、きっと自分らしく時間を使いながら、心地よく働ける未来が待っているはずです。