「これって経費にしていいの?」「申告ってどうするの?」「税金、思ったより高い…!」
フリーランス美容師として独立を考えた瞬間から、多くの人がぶつかる“お金の不安”。
技術や集客に自信があっても、経費・税金・確定申告のことになると、誰もが最初は初心者です。
この記事を読めば、
- 何が経費になるのか?
- どこまでがOKで、どこからがNGなのか?
- 節税に繋がる管理のコツは?
といった疑問がすっきりクリアになります!
美容師として「自由に働く」ためには、お金の仕組みも味方にすることが欠かせません。
この記事では、フリーランス美容師が知っておくべき経費の考え方と、節税・申告の基本をまとめています。
これから独立する方にも役立つ「お金の知識の教科書」として、ぜひご活用ください。

1. フリーランス美容師にとって「経費」とは何か?
① そもそも経費とは?会社員との違い
会社員は、すでに税金が引かれた「手取り給与」を受け取る立場ですが、個人事業主であるフリーランス美容師は違います。
自身でお客様から料金を受け取り、そこから必要経費を差し引いた“残り”が課税対象となる所得になります。
つまり、経費をどう扱うかで、支払う税金や手元に残るお金が大きく変わってくるのです。
② フリーランスにとって経費が重要な理由
たとえば月80万円の売上があった場合、材料費・面貸し料・交通費などで30万円の経費があれば、課税対象は50万円。
税率が20%なら、税金額は経費を正しく計上するかしないかで約6万円も差が出る可能性があります。これは毎月の話なので、年間にすると72万円の節税効果になることも!
このように、経費の管理は収入を守る具体的な手段であり、適切に活用することで「実質的な利益」を最大化できます。
項目 | 経費あり | 経費なし |
月間売上 | ¥800,000 | ¥800,000 |
経費 | ¥300,000 | ¥0 |
所得 | ¥500,000 | ¥800,000 |
税率 | 20% | 20% |
支払う税金 | ¥100,000 | ¥160,000 |
税額の差 | – | +¥60,000 |
③「節税=収入を守る手段」であることを理解しよう
「節税」というと裏技のように聞こえますが、本質は違います。
節税とは、法律に沿って正しく経費を使い、不要な税金を減らすこと。なんでも経費にする行為は“脱税”のリスクがあります。
経費とは、「業務に必要な支出かどうか?」を常に自分で判断する力。フリーランスにとっての経費知識は、収入をコントロールする技術とも言えるのです。
2. 美容師が経費にできる主な費用項目一覧
① 仕事で使う=経費OKとなる基準とは?
経費になるかどうかの判断基準はシンプルです。
それは、「業務のために必要な支出だったかどうか」。
つまり、「売上を得るため」「施術を行うため」「集客や準備をするため」の出費であれば、基本的には経費として認められます。
ただし、「プライベートとの兼用になっていないか?」が非常に重要なチェックポイント。
領収書があっても、「仕事との関係性を説明できない支出」は認められません。
② 材料費・広告費・講習費などの具体例
フリーランス美容師が日々の業務で支出するなかで、代表的な経費項目は以下の通りです。
カテゴリー | 例 |
材料費 | カラー剤、パーマ液、トリートメント剤、消耗品など |
サロンの利用料 | 面貸しサロン、シェアサロンの月額利用料金や時間貸し料金 |
広告宣伝費 | ホットペッパー、Instagram広告、チラシ制作など |
交通費 | 講習、仕入れ、施術同行など業務上の電車代・タクシー代 |
通信費 | 業務用スマホ・Wi-Fi・LINE公式アカウント使用料など |
講習費・学習費 | カットカラー講習、接客マナーセミナー、ビジネス書籍など |
衣装費 | 業務で使う洋服、撮影用の洋服など(私用と分ける) |
美容所管理費 | 消毒液、保健所への届出関連、検査用品など |
③ 意外と知られていない“経費にできる支出”とは?
一見プライベートに見えても、使い方・証明方法次第で経費にできる項目もあります。例えば以下のようなものです。
経費になり得る支出 | 解説ポイント |
撮影用小道具・装飾品 | SNS投稿用であれば業務目的としてOK(花、雑貨など) |
スタッフとのランチ代 | 研修・指導目的や定例ミーティングであれば会議費として計上可 |
サロン内で使うBGM配信料 | Spotifyなどの業務用アカウント使用料も対象 |
オンラインツール課金 | Canva Pro、Google Workspaceなど業務効率化に役立つもの |
家賃の一部(自宅兼事務所) | 面積比や利用時間を按分すれば、家賃・光熱費も経費化可能 |
3. 経費にならないNG項目とその理由
すべての支出が経費として認められるわけではありません。ここでは、美容師の仕事に関係がなさそう、もしくは説明が難しい“原則NGな支出”をカテゴリ別に整理します。
カテゴリー | NG例 | 理由 |
飲食費 | 自分ひとりのランチ代/家族との食事 | 仕事目的でなければ私用と判断される |
衣装・服飾品 | 普段着にも使えるおしゃれ服 | 業務専用と証明できないとNG |
美容・ネイル代 | 自分の美容室やネイルの利用代 | 業務ではなく私的な“身だしなみ”と判断される |
旅行費・宿泊費 | 家族旅行/観光を含む出張 | 観光・プライベート目的との区別が必要 |
家賃・光熱費(全額) | 自宅家賃を全額計上 | 事業用割合(按分)を示さなければ認められない |
計上に迷ったら「業務との関係を説明できるか?」を基準に判断しましょう。
4. 【実例】月売上80万円のフリーランス美容師の経費内訳
① モデルケース:1ヶ月のリアルな支出例
月に80万円の売上があるフリーランス美容師の場合、以下のような経費が発生します。
経費項目 | 金額(目安) |
売上 | ¥800,000 |
材料費 | ¥80,000 |
サロン利用料 | ¥120,000 |
広告費 | ¥40,000 |
交通費・通信費 | ¥25,000 |
セミナー・書籍代 | ¥15,000 |
その他雑費 | ¥10,000 |
経費合計 | ¥290,000 |
→ 所得(売上-経費):約¥510,000(ここから税金がかかります)
② 経費割合は売上のどれくらいが理想?
多くのフリーランス美容師の「経費割合」は、売上の30〜40%が平均的です。
材料費や面貸し料が高めのサロンに所属している場合は、45%を超えることもあります。
経費が少なすぎても設備や材料をケチることになり、顧客満足度が下がるリスクに。
逆に多すぎると、利益が圧迫されて生活や貯金に回す余裕がなくなることも。
→ 自分の働き方と売上に合わせた“バランス感覚”が大切です。
③ “残るお金”を最大化するコツとは?
売上が同じでも、「何に・いくら使うか」で残るお金は大きく変わります。
- 経費を「削る」のではなく「活かす」
→ 集客力のある広告/質の高い材料/効率的なツールなど、“投資型経費”に切り替える。
- 経費管理を“習慣化”する
→ レシート溜め込みNG。週1回の記録でムダが見えてきます。
- 無駄な税金を払わない
→ 青色申告や控除を活用して、“合法的に節税”することも、手元に残すテクニックです。
5. 経費を正しく管理する3つの方法
① スマホアプリで経理する
手元にあるレシート、スマホで写真を撮るだけで経費登録が完了できるアプリが存在します。
アプリで銀行口座やクレジットカードと連携すれば、支払い情報も自動で取り込んでくれるので何に使用したか記録が付けやすくなります。
おすすめポイント
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② エクセルで「自分だけの経費帳」を作る
「自分の目で確認しながら管理したい」人には、エクセルやGoogleスプレッドシートがおすすめです。
日付・内容・金額などを入力するだけで、月ごとに集計してくれるものも。無料で使えるテンプレートがたくさんあります。
おすすめポイント
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③ クラウド会計で「確定申告まで一気に終わらせる」
経費管理は、ただの記録じゃ終わらないです。帳簿づけ、青色申告、確定申告書の作成…全て行わなければなりません。
しかし、「クラウド会計ソフト」を使えば、上記全て、自動化が可能です。
freee、マネーフォワードクラウド、弥生などは、日々の経費入力から帳簿作成、最終的な申告までサポートしてくれるのでおすすめです。
おすすめポイント
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6. 経費と節税の違いと注意点
「これ、経費にできるかな?」「節税になるからって言われたけど、本当?」経費や節税の話って、なんとなく「得しそう」なイメージがあると思います。
しかし、正しい知識がないまま自己判断すると、後で大きなトラブルになることも。税務署に否認されると追徴課税リスクもあるため、経費の線引きは慎重に行いましょう。
①「なんでも経費」は危険!脱税との違い
「経費にすれば税金減るんでしょ?」という考え方はとっても危ないです。
確かに、経費が増えれば利益が減り、そのぶん課税対象も減ります。ですが、なんでも経費にしていいというわけではありません。
以下3つが基本となります。
経費として認められるには条件がある
- 仕事(事業)に直接関係していること
- 実際に支払いが発生していること(架空はNG)
- 記録が残っていること(領収書、明細、メモなど)
脱税との線引き
- 節税:法律の範囲内で税負担を軽くする
- 脱税:違法に税金を逃れる(虚偽の経費、意図的な過少申告など)
「なんでも経費に入れておけばいい」は、意図しなくても“脱税”になる可能性がある行為です。
② 合法的に節税するための考え方
節税は「ズルをすること」ではなく、「税法のルールを上手に使うこと」です。
たとえば税法では、個人事業主や中小企業向けに、さまざまな“節税制度”が用意されています。それを知って、正しく使うことが“合法的な節税”です。
よく使われる節税の例
→ 複式簿記で帳簿をつけると、大きな控除が受けられる
→ 10万円未満 or 年間合計300万円までの設備投資を一括で経費にできる
→ 電気代や通信費などを、業務使用分だけ経費にできる |
大切なのは「説明できる根拠」です。節税においても、「なぜそれを経費にしたのか」を説明できるかがとても重要となります。
③ 過去に否認された“よくある失敗”は?
経費や節税で、税務調査のときに「否認」されてしまうケースが実際にあります。
よくあるパターンと、なぜダメだったのかを知っておきましょう。
家族との食事を“接待交際費”にした
例:仕事の話もしたからOK…のつもりが、領収書に「家族3名」と記載。
→ プライベートとの区別がつかず、全額否認。
旅行代を「出張費」として処理
例:一部だけ仕事関係の予定が入っていたが、ほとんどが観光だった。
→ 経費とするには「目的」「証拠(スケジュール、資料)」が足りず、否認。
自宅家賃を全額経費にした
例:作業部屋があるからOKと思って全額経費に。
→ 家事按分(仕事に使ってる割合)を明確にしていないため、一部のみ認められた。
否認されないポイントは、9.税務署にチェックされやすい“危ない経費”とは?まで。
7. よくある経費Q&A
Q. 打ち合わせのカフェ代は?
A. お客様やスタッフとの業務目的であればOK。誰と・何のために使ったかメモを残しておくと安心。
Q. 自宅の家賃・光熱費は経費にできる?
A. 自宅兼仕事場の場合、使用面積や時間で“按分”すれば一部を経費にできます。全額計上はNG。
Q. 撮影用の服は経費になる?
A. 業務目的の撮影で使うならOK。普段着と兼用しないよう、レシートや使用目的を明記しておくと良いです。
Q. スマホ代・Wi-Fi代は?
A. 業務使用割合(例:7割)を明確にして、その分を経費にできます。
Q. 家族との食事代は経費?
A. 原則NG。仕事の話が中心でも、レシートに家族構成があると否認されやすいです。
8. 税理士は必要?判断基準と相場
フリーランスになったばかりの人がよく迷うのが税理士はつけるべきかどうかという問題です。
売上規模・費用感・頼むかどうかの判断基準をわかりやすくまとめてみました。
① 月売上◯万円なら税理士は必要?
売上よりも「手間とリスク」が基準になります。
月売上が50万円以上(年収600万円超〜)
→ 経費も増え、帳簿のボリュームも多くなる。
→ 顧問税理士を検討するタイミングです。(毎月 or 隔月でサポートしてくれる)
ポイント
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売上600万円ではなくても、経費計上が複雑になってきたら税理士を検討しましょう。freeeなどと併用すればコストも抑えられます。
② 顧問契約と確定申告代行の費用感
「税理士って高いんじゃないの…?」と感じる人も多いですが、契約の仕方によっては意外と手が届きやすいです。
顧問契約(定期サポートあり)
- 月1万円〜3万円前後(規模や内容によって変動)
- 決算・確定申告の費用は別で+5〜10万円程度
- 記帳代行、税務相談、書類チェックなどを定期的にやってくれる
スポット契約(確定申告のみ依頼)
- 年に1回:3万〜8万円前後(書類の整理ができていればもっと安く済む)
- 会計ソフトを使ってデータをまとめておけばコストも抑えられる
記帳代行を頼む場合(帳簿づけからお任せ)
- 月1〜2万円前後+確定申告5〜10万円
- 領収書を渡すだけでOKなケースも多い(そのぶん費用はやや高め)
③ プロに頼むか?判断ポイント
- 売上や経費が多くて整理が大変
- 経費判断が不安 or 税務署対応に自信がない
- 青色申告を確実にしたい・節税もちゃんとしたい
- 開業したばかりで方向性に不安がある
「時間を買う」「リスクを減らす」という意味で、経費にできる投資と考えると◎
税理士は「年収◯万円以上になったら自動的に必要」というわけではありません。ご自身の作業量・不安・目的に応じて判断することが大切です。
9. 税務署にチェックされやすい“危ない経費”とは?
税務署が特に注意深く見る“グレーゾーン”の経費項目を紹介します。経費として認められるかどうかは、使い方と証拠(レシートやメモ)次第です。
危ない経費例 | チェックされる理由/対策 |
カフェ・飲食代 | 目的と相手を明記(打ち合わせ、誰と) |
自宅家賃・光熱費 | 按分の根拠が必要。全額NG。 |
衣装(黒服など) | 私用と兼ねるとアウト。業務専用ならOK。 |
美容・ネイル代 | “見た目が商品”の証拠(SNSなど)を残す |
交通費 | 業務目的(講習、出張)を記録する |
「何のために・誰のために・どこで使ったか」が説明できれば安心です。
10. まとめ|経費の知識は「稼げるフリーランス美容師」になるための武器
経費は、日々の支出を単に記録するだけのものではなく、将来の安定した働き方を支える「お金の土台」となります。
まずは、普段の支出を振り返り、自分に合った方法で管理を始めることからスタートしましょう。
次に進めるべきポイントは
- 仕事に関係する支出をしっかり仕分ける
- ムダな支出を見つけて改善する
- 集客や効率に貢献する支出は、前向きに活かす
これらを意識するだけでも、「使うお金」と「残るお金」のバランスは大きく変わってきます。
もし不安や迷いがあれば、年に一度でも専門家の意見を聞いてみることをおすすめします!
