ビジョンが重要?美容室を開業する前に考えたい将来像を4つのステップで解説

美容師の独立

美容室を開業する際、「資金調達」「物件取得」「採用や教育」「集客」など考えることはたくさんありますが、まず最初に考えていただきたいことは「ビジョン」です。

ビジョンは、ご自身のサロンがどのような存在でありたいか、どのような価値を提供したいかを明確にするための指針となります。

本記事では、美容師が独立を考える際に最初に考えるべきビジョンの作り方について詳しく解説します。

美容室の開業になぜ「ビジョン」が重要なのか?

ビジョンがなぜ大切なのか?もし、ビジョンがなかったら何が問題なのか?
抽象度の高い話題だからこそ、その重要度をお伝えさせていただきます。

ビジョンとは、サロンの方向性を決定し、スタッフや顧客に対してサロンの目的や価値観を伝えるものです。明確なビジョンがないと、サロンの方向性が定まらず日々の業務や長期的な計画が曖昧になります。

目指すべき目標が不明確だと、スタッフの意欲が低下して一体感が失われたり、競合他社との差別化が難しくなったり、市場での競争力が低下したりと美容室の成長や成功に大きなリスクをもたらします。

そのため美容室の開業を成功させるためにはビジョンを持つことが重要だと言えるでしょう。
また、ビジョンを持つことで以下のようなメリットがあります。

明確な目標設定

ビジョンがあることで、サロンの長期的な目標を明確に設定することができます。これは、日々の業務や戦略を立てる際の指針となります。

また、限られた時間や資源を効果的に活用するための優先順位を明確にすることができます。
明確な目標設定は、個人や組織が成功するための重要なステップとなります。

一貫したブランドイメージの構築

ビジョンに基づいて一貫したブランドイメージを構築することで、顧客に対して強い印象を与えることができます。
顧客がブランドを認識しやすくなり、ブランド認知度を高めます。
一貫したブランドイメージによって成功した事例を見ていきましょう。

  • スターバックス

スターバックスは、単なるコーヒーショップではなく、「サードプレイス」(家庭でも職場でもない第三の場所)を提供することに成功しました。
高品質なコーヒーとリラックスできる空間、顧客に対する一貫したサービスがブランドイメージを強化しています。

  • アップル

アップルは、革新的な製品デザインと直感的なユーザーエクスペリエンスに焦点を当てています。
ブランドイメージは「革新」と「シンプルさ」に統一され、消費者に強い印象を与えています。

  • ユニクロ

ユニクロは、「LifeWear」というコンセプトを基に、高品質かつ手頃な価格の衣料品を提供しています。
【シンプルで機能的なデザイン】、【高品質で手頃な価格】、【お客様第一のサービス】のような店舗での一貫したブランドメッセージが成功の要因です。

いかがでしょうか?
私たちの身近な企業や商品はビジョンの基、ブランディングに成功しています。
ぶれないブランド軸を保つためにも、いかにビジョンが大切かがよく分かりますね!

同じビジョンを見据えることによってスタッフのモチベーションが向上

スタッフがビジョンを共有し同じ目標に向かうことで、仕事に対する意欲が高まり、一体感が生まれます。
モチベーション向上の具体的なプロセスとしては以下のような場面が挙げられます。

  • 採用面談時
ビジョンとミッション共有 サロンのビジョンやミッションを共有し、応募者の価値観との一致を確認。
キャリアパスの提示 長期的なキャリアパスを説明し、成長機会を明確に示す。
  • 入社後面談
目標設定 入社後すぐに短期および長期の目標を設定し、達成方法を共に考える。
フィードバックの提供 初期段階でのフィードバックを通じて、期待値を明確にする。
  • 定期面談
フィードバック&ミッション
設定面談
定期的にフィードバックを提供し、新しいミッションや目標を設定。
進捗確認 達成状況を確認し、必要なサポートを提供。
  • 日々のコミュニケーション
オープンな対話 日常的にオープンなコミュニケーションを促し、問題やアイデアを共有しやすい環境を作る。
感謝の表現 日々の業務に対する感謝を忘れずに伝える。
  • ビジョン共有の場
全体会議 定期的な全体会議やワークショップを通じて、ビジョンやミッションの進捗を全員で確認。
成功事例の共有 成功したプロジェクトや達成された目標を共有し、モチベーションを高める。

このような場面やプロセスを通じて、スタッフのモチベーションを高め、サロン全体の成長を促進しましょう!

美容室が考えるべきビジョン作成4STEP

ビジョンを作成するためには、順にステップを踏む必要があります。具体的な手順を見ていきましょう。

STEP1. 自社分析と市場調査

ビジョンの作り方でもっとも大切なのは、経営者自身がそのビジョンに深く共感していることです。
具体的に言えば、「過去の経験」から語られるストーリーがあると非常に望ましいでしょう。
加えて、市場ニーズや競合調査を行うことでビジョンを軸とした戦略が具体化されていきます。

  • 経営者の価値観や体験を整理する

なぜ自分のサロンを作るのか?今の状態では「足りない何か」があるはずです。これを満たすために開業するはずなので、自分の価値観や経験を整理しましょう。
例えば、今の会社の給料になっとくいかないならば「所得」を上げられるサロンを作りたい。とか、複数枠を同時に掛け持ちして顧客満足度が下がっている。と感じるならば「マンツーマン」を軸とした高付加価値のサロンを作りたい。とかになるでしょう。

  • 自社分析

自社が美容室としてどのような強みを持っているのか、どのような価値を提供できるのかを考えます。
例えば、カット技術が得意なのか、カラーリングが得意なのかなど、自社独自の強みやスキルを振り返りましょう。
また、先ほどの例で挙げたように「高付加価値のサロン」を目指すには、その価値に見合う技術力と育成力(再現性)が重要である。となります。

  • 市場調査

次に、ターゲットとする市場や競合を調査します。地域のニーズやトレンド、競合サロンの特徴を把握することで、自分のサロンが提供すべき価値を見出すことができます。

その際、どのように自社の強みを見つけるかを「集客で勝つためのコツとは?美容室開業時に考えるべき『ウリ』の決め方」にて解説していますのでご確認ください。

STEP.2 ビジョンの定義づけ

自社分析と市場調査を基に、サロンのビジョンを定義します。
ビジョンはシンプルで明確なものであるべきです。

例えば、「コンプレックスを自分だけの魅力に変えるヘアサロンをつくる」「柔軟な働き方でスタッフ満足度が高いサロンを目指す」など、具体的で実現可能な目標を設定しましょう。

STEP3. ミッションステートメントの作成

ビジョンに基づいて、サロンのミッションステートメントを作成します。
これは、ビジョンを達成するための具体的な行動指針となるものです。

例えば、「質の高いカウンセリングや個々に合わせたスタイルを提供し、顧客満足度を高める」「スタッフの成長を支援し、プロフェッショナルな環境を提供する」などです。

STEP4. 長期的な計画の策定

ビジョンとミッションを基に、サロンの長期的な計画を策定します。これには、経営戦略やマーケティングプラン、人材育成計画などが含まれます。
長期的な計画を立てることで、ビジョンを実現するための具体的な道筋が見えてきます。

どのように長期計画を立てていくのかは「美容室の開業で90%以上の経営者が不安を抱える、事業計画の作り方|テンプレート付き」にて解説しておりますのでご確認ください。

ビジョン実現に向けた具体的なアクション

ビジョンを作成した後は、それを実現するための具体的なアクション決めることが重要です。
以下に、いくつかの具体的なアクションを挙げていきます。

ブランドの構築

ビジョンに基づいて、サロンのブランドを構築します。ロゴや店内のデザイン、サービスの内容など、すべての要素が一貫したメッセージを伝えるようにしましょう。そうすることによって自店の強みがより伝わりやすくなります。
どのようなプロセスを追えば良いのかを確認していきましょう。

項目 ステップ 説明
ロゴデザインのプロセス ①インスピレーションの収集 ・他のブランドや業界のロゴをリサーチし、トレンドや効果的なデザイン要素を把握する。
②デザイン要素の選定 ・カラー: ブランドイメージに合ったカラーを選ぶ。色の心理学を考慮し、顧客に与える印象を意識する。

・フォント: 読みやすく、ブランドの個性を反映するフォントを選ぶ。

・シンボル: サロンの特徴やサービスを象徴するシンボルを検討する。

③試作とフィードバック ・試作品を作成し、スタッフや顧客からのフィードバックを得る。

・フィードバックをもとに修正を行い、最終デザインを決定する。

サービス内容の構築 ①コアサービスの特定 ・美容室が提供する主要なサービスをリストアップする。
例: カット、カラー、トリートメント。
②付加価値サービスの検討 ・顧客に特別な体験を提供するための追加サービスを考える。
例: オーガニック製品の使用、ヘッドスパ、アフターフォロー。
③サービスの一貫性 ・全スタッフが同じ高品質のサービスを提供できるようにトレーニングを行う。
④顧客体験の最適化 ・予約システム、接客態度、店内の雰囲気など、顧客体験全体を通じてブランドメッセージを一貫して伝える。
デザインとロゴの統合 ①一貫したビジュアルアイデンティティ ・ロゴ、カラー、フォント、デザイン要素を統一し、すべてのマーケティング素材や店舗デザインに反映させる。
②ブランドガイドラインの作成 ・ロゴの使用方法、カラーコード、フォントスタイルなどを定めたガイドラインを作成しブランドの一貫性を保つ。

この思考プロセスに従うことで、美容室のロゴ、デザイン、サービス内容を効果的に考え出し、顧客に魅力的なブランド体験を提供することができます。
ブランドアイデンティティの確立から始め、各要素を統合して一貫したメッセージを伝えることが成功の鍵です。

スタッフの育成

ビジョンを共有し、実現するためには、スタッフの育成が欠かせません。定期的なトレーニングやミーティングを通じて、ビジョンをスタッフに浸透させましょう。

ビジョンに基づいたサービス提供、サロンワークを心がけスタッフが日常業務で実践できるようにサポートします。
成功事例を共有し、ビジョンが実現されていることをサロン全体で把握していきます。

マーケティング戦略の実施

ビジョンを実現するためには、効果的なマーケティング戦略が必要です。SNSやウェブサイトを活用し、サロンの魅力を広く発信しましょう。

また、地域のイベントに参加するなど、地元とのつながりを強化することも大切です。
マーケティング戦略の詳細は『売上を伸ばす美容室開業時に考えるべきマーケティング戦略』を参照ください。

顧客フィードバックの活用

顧客からいただいたフィードバックはきちんと活かされているでしょうか?
ただ口コミをいただいているだけになっていませんか?
また、悪い口コミが入ることを恐れている美容師さんが多いと思いますがうまく活用することによってプラスに変えるチャンスとなります。
顧客のフィードバックを積極的に取り入れることで、サービスの質を向上させていきましょう。
定期的にアンケートを実施したり、顧客からの口コミやレビューを積極的に集めることで、ビジョンに近づくための改善を行います。

  • 良い口コミの場合

インスタグラムやフェイスブックなどのSNSプラットフォームで顧客のポジティブなレビューをシェアします。写真やハッシュタグを使って視覚的に訴えることも効果的です。
また、サロン内ではスタッフに良い口コミを共有し、モチベーションを高めることも重要です。良い口コミをもらった当事者には何が良い口コミに繋がるポイントだったのかを全体の場で共有してもらい、今日からできることを全員で把握します。
良い口コミを効果的に活用することで、美容院の信頼性を高め、新規顧客の獲得や既存顧客のロイヤルティ向上に繋げることができます。
オンラインとオフラインの両方で口コミを活用し、ブランドイメージを強化しましょう。

  • 悪い口コミの場合

悪い口コミに対しては迅速に対応し、顧客の不満に真摯に向き合います。謝罪と共に解決策を提示し、問題の再発防止に努めることが大切です。
また、悪い口コミを分析し、サロン内部で問題点を洗い出します。サービスの改善やスタッフの再教育を行い、品質向上に取り組みます。
悪い口コミはサービス改善のチャンスと捉え、迅速かつ真摯に対応することで、顧客の信頼を取り戻すことができます。
問題点の分析と改善を徹底し、透明性を持って対応することが鍵となります。

ビジョンの見直しと進化

ビジョンは一度作ったら終わりではなく、定期的に見直し、進化させていくことが重要です。
市場の変化やサロンの成長に合わせて、ビジョンを柔軟に調整しましょう。

定期的な振り返り

定期的にビジョンの達成状況を振り返り、必要に応じて修正を加えます。
スタッフとのミーティングや顧客のフィードバックを基に、現在のビジョンが適切かどうかを確認しましょう。

ビジョンを定期的に見直し、改善するために、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を活用することが有効です。
以下にその具体的なアクションを解説します。

ステップ 具体的なアクション
Plan
(計画)
・現在のビジョンを評価し、達成状況を確認します。

・新しい目標や改訂が必要かどうかを判断します。

・必要に応じて、ビジョンの修正案を作成します。

Do
(実行)
・修正したビジョンをスタッフに共有し、実行計画を立てます。

・必要なリソースを準備し、具体的なアクションを開始します。

Check
(評価)
・実施したアクションの結果を定期的に評価します。

・成果や問題点をデータで確認し、フィードバックを収集します。

Act
(改善)
・評価結果を基に、改善が必要な点を特定します。

・改善策を実施し、次の計画に反映させます。

・PDCAサイクルを再度回し、継続的な改善を図ります。

 

【具体例】

  • Plan

美容室のビジョン「コンプレックスを自分だけの魅力に変えるヘアサロン」を再評価し、顧客満足度向上のための具体的な目標を設定。

  • Do

新しい顧客アンケートの導入やスタッフトレーニングを実施。

  • Check

定期的にアンケート結果を分析し、スタッフのフィードバックを確認。

  • Act

アンケート結果から得られた改善点を反映し、サービスの質を向上。
PDCAサイクルを活用することで、ビジョンの見直しと継続的な改善が可能になります。
定期的な評価と改善を繰り返し、サロンの目標達成に向けた効果的なアプローチを実施しましょう。

新たな挑戦

ビジョンを実現するためには、常に新たな挑戦を続けることが重要です。新しい技術やサービスを導入することで、サロンの競争力を高めましょう。
以下に、具体的な新たな挑戦のアイディアを紹介します。

項目 説明
最新技術の導入 新しいヘアケア技術やトレンドのスタイリング技術を取り入れ、顧客に最先端のサービスを提供します。
デジタルマーケティングの強化 SNSやウェブ広告を活用し、オンラインでの存在感を強化します。特にInstagramやTikTokでのビジュアルコンテンツが効果的です。
エコフレンドリーな取り組み 環境に配慮した製品やサービスを導入し、エコ意識の高い顧客層にアピールします。例えば、オーガニック製品の使用やリサイクル活動の推進など。
コラボレーションとイベント 他のブランドやインフルエンサーとコラボレーションし、特別なイベントやキャンペーンを実施します。地域イベントへの参加も顧客とのつながりを強化します。
スタッフのスキルアップ 定期的なトレーニングやセミナーを通じて、スタッフの技術や接客スキルを向上させます。最新のトレンドや技術を学び続けることが重要です。
多様なサービスの提供 ビジョンに沿っている場合、ヘアカットやカラーリングに加えて、スパやネイルなどの追加サービスを提供し、ワンストップで美を追求できるサロンを目指します。

新たな挑戦を取り入れることで、美容室の競争力を高め、顧客の満足度を向上させることができます。これらの戦略を積極的に実践し、サロンの成長を目指しましょう。

まとめ

美容師が独立を考える際、最初に考えるべきビジョンの作り方について解説しました。
しっかりとビジョンを持つことの大切さがお分かりいただけたのではないでしょうか。

ビジョンは、サロンの方向性を決定し、スタッフや顧客に対してサロンの目的や価値観を伝えるためのものです。
自己分析と市場調査を基にビジョンを定義し、具体的なアクションを通じて実現していくことが重要です。
ビジョンは定期的に見直し、進化させることで、サロンの成功に繋げていきましょう。

美容師としての独立は大きな挑戦ですが、明確なビジョンを持つことで、その成功への道筋が見えてきます。自分自身の強みを活かし、市場のニーズに応えるサロンを目指して、一歩一歩進んでいきましょう。
参考にしたい具体例や詳細なステップについては、信頼できるビジネス書や専門家のアドバイスを活用することをお勧めします。