美容師として独立し、自分のサロンを持つこと。それは夢であり、大きなステップアップです。しかしその裏側で、意外と多くの美容室オーナーが直面する落とし穴——それが「税金」です。
「税金っていつからかかるの?」「どれくらい準備すればいいの?」「開業直後は売上も少ないのに支払えるの?」
こうした不安を“なんとなく後回し”にしてしまった結果、開業から1〜2年後に税金の請求が来て資金が足りず、経営が傾いてしまう…というケースも少なくありません。
この記事では、そんな美容室オーナー予備軍の方に向けて、開業後にかかる税金の種類・時期・準備すべき資金の目安までを、初心者でもわかるように徹底解説します。
読めば、「これで安心して開業できる!」と思えるはずです。
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美容室経営にかかる主な税金【5種類とその基本】
美容室を開業すると、事業主として避けて通れないのが「税金」の存在です。
開業直後は売上や経費の管理に目が向きがちですが、税金の準備をしていないと、翌年以降に資金がショートするリスクも。ここでは、美容室経営に関係する5つの主な税金をわかりやすく解説します。
税金の種類 | 課税内容 | 支払先 | 支払いタイミング |
所得税 | 売上から経費を差し引いた「所得」に対してかかる国税。 確定申告で金額が決定。 |
税務署 | 翌年3月15日までに申告・納税 |
住民税 | 所得額に応じて課税される地方税。前年の所得がベース。 | 市区町村 | 翌年6月から12月まで年4回に分割納付 |
消費税 | お客様から預かった消費税を国に納める義務。 年間売上1,000万円超で課税事業者に。 |
税務署 | 開業2年目以降に発生 |
個人事業税 | 所得が290万円を超えると発生(美容業は課税対象)。 | 都道府県税事務所 | 年2回に分けて納付(8月・11月が多い) |
固定資産税 | 土地や建物を所有している場合に発生。 不動産を借りているだけなら対象外。 |
市区町村 | 年1回、4〜6月に通知・納付 |
これらの税金は「いつから発生するか」「いくらかかるか」が非常にわかりづらく、1年目は請求が来ないものもあるため油断しがち。しかし、2年目以降に一気に請求が来て資金繰りに困る美容室も少なくありません。
そのため、開業初年度から「納税資金の積立」を始めておくことが、経営を安定させる大きなカギとなります。
次章では、それぞれの税金が“いつ・どのくらい”必要になるのかを、時系列で解説していきます。
税金の支払いスケジュール|いつから・いくらかかる?
美容室を開業すると、「税金の支払い」はすぐに始まると思いがちですが、実際には翌年、あるいは翌々年にまとめて発生する税金も多くあります。 そのため、最初の1〜2年は“請求が来ない安心感”に油断しがち。ですが、2年目に突然ドンと請求が来て資金が尽きてしまうケースも。
以下に、代表的な税金の発生タイミングを「開業初年度から3年目までの目安」として整理しました。
年次 | 税金の種類 | 支払い時期 | 目安額(年間売上2,000万円の場合) |
1年目 | 消費税 | 原則なし(免税期間) | 0円 |
1年目 | 所得税 | 翌年3月に確定申告・納税 | 約60万〜100万円 |
2年目 | 住民税 | 6月から通知→年4回支払い | 約50万〜70万円 |
2年目 | 個人事業税 | 所得290万円超で8月頃通知 | 約18万円〜30万円 |
毎年 | 固定資産税(※物件保有者) | 4〜6月に納付書送付 | 土地・建物の評価額次第(例:年間10万〜30万円) |
【注意ポイント】 とくに「住民税」「個人事業税」は前年の所得が対象になるため、2年目に初めて発生するという点を見落としがちです。
さらに、年間売上1,000万円を超えている場合、3年目から消費税の納付も発生する可能性があります。経営が軌道に乗ってから税負担が一気に増えるため、開業初年度から少しずつ「納税資金の積立」を始めておくのが鉄則です。
次の章では、それぞれの税金がどうやって決まり、どうやって備えるべきかを詳しく解説していきます。
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開業から2年後に訪れる“税金ラッシュ”に注意
美容室を開業しても、最初からすぐに税金の請求がくるわけではありません。本当の意味で“経営者としての税負担”を実感するのは、開業から1〜2年後です。
「思ったより順調に売上が出てきた!」というタイミングで突然やってくるのが“税金ラッシュ”。このタイミングで資金の準備ができていないと、税金が払えずキャッシュフローが一気に崩れるケースも少なくありません。
以下は、たとえば4月に開業した場合の“リアルな納税スケジュール”です。
時期 | 発生する税金 | 金額目安(年間売上500万円の場合) |
翌年3月 | 所得税(確定申告) | 約10〜30万円 |
翌々年6月〜 | 住民税(前年所得に対して) | 年間24万円前後 |
翌々年8月〜 | 個人事業税(所得290万円超) | 約5万円〜 |
3年目以降 | 消費税(売上1,000万円超) | 売上から経費を差し引いた額の約10% |
💡 注意点
最初の1〜2年は税金が“ほとんど発生しない”ことで油断しがちですが、その期間にこそ翌年の納税資金を積み立てておくことが重要です。
特に、経営が軌道に乗って売上が伸びると、それに比例して税金額も増えます。「利益が出た=全部使えるお金」と思ってしまうと、2年後の納税で資金が足りなくなるリスクがあります。
次章では、それぞれの税金についてより具体的に見ていきましょう。
税金に備えるための3つの準備【初心者でも今すぐできる】
美容室経営において、「税金が払えずピンチになる」ことは実は珍しくありません。
特に開業から2年目・3年目以降、思わぬ税金の請求に資金繰りが追いつかず、廃業に追い込まれるケースもあります。
こうした事態を防ぐためには、日頃からの準備が何より重要。
ここでは、初心者でも今日からできる【3つの備え方】を詳しくご紹介します。
① 売上の30%を“税金用”に積み立てておく
「売上の何割を積み立てればいいの?」と迷う方が多いですが、目安は【売上の30%】です。
なぜこの数字かというと、実際に発生する税金(所得税+住民税+個人事業税)をざっくり合計すると約30%前後になるからです。
税目 | 税率の目安 |
所得税 | 10〜23% |
住民税 | 約10% |
個人事業税(該当者) | 約5% |
これらを合計すると25%~38%。
30%ほどを見積もっておけば、突然の納税タイミングでも慌てることなく対応できます。
💬 POINT
✅ 毎月、売上の30%ほどを別口座に移して「税金専用の資金」として管理しておくのがポイント! ✅ 手元に現金があると、つい使ってしまいがちなので“物理的に分ける”ことが大切です。 |
② 会計ソフトで“利益と税額”を見える化する
「まだ売上そんなにないし、細かい管理は後で…」と思っている方、要注意!
税金は“今”の行動が、1年後、2年後の資金繰りを大きく左右します。
マネーフォワードやfreee といったクラウド会計ソフトを使えば、
- 日々の売上入力
- 経費の仕訳
- リアルタイムでの利益・税金額の把握 まで、スマホやPCで簡単に管理できます。
「お金の流れが見える」だけで、無駄遣いが減り、税金への備えもグンとラクになります!
③ 青色申告で“合法的に節税”する
確定申告には「白色申告」と「青色申告」がありますが、圧倒的に【青色申告】がおすすめです。
なぜなら…
- 最大65万円の特別控除が受けられる
- 赤字を最大3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できる
- 家族に支払った給与を経費にできる(専従者控除)
と、合法的に節税できる仕組みがたくさん用意されているからです。
💬 注意点 青色申告を使うには、開業から2ヶ月以内に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。 出し忘れると白色申告になってしまい、せっかくの節税メリットを逃してしまうので、早めの対応を! |
「税金なんて先の話」と思わず、今日から少しずつ準備を始めていきましょう。
未来のあなたのサロンを守る、大事な“自己防衛”になります!
👉 もっと“初期コスト”そのものを抑えて開業したい方へ
税金の積立に余裕を持たせるには、開業時点でなるべく支出を抑えることも有効な戦略です。 【ALL SHARE(オールシェア)】初期費用0円で美容室を開業できる支援プラン。 物件探しから内装工事までを一括サポート。 ▶︎ 詳しくはこちら → [ALL SHAREのサービスを見る] 【me by,,(ミーバイ)】出店コスト20分の1で2〜3席の美容室を出店できるサービス。保証金は月額賃料の1.5ヶ月分、月々発生する料金は固定費のみで、手軽に“自分の店”を持てます。 ▶︎ me by,,の詳細を見る → [me by,,の公式ページへ] |
融資の返済と納税で資金繰りが悪化しないために
美容室を開業する際、日本政策金融公庫などから融資を受けるケースは非常に多く、初期資金としてはとても心強い選択肢です。ただし注意すべきなのが、税金の支払いと融資の返済が重なるタイミング。資金繰りを誤ると、一気にキャッシュフローが悪化し、経営が行き詰まるリスクがあります。
以下は、融資と税金が発生するタイミングと目安額の一例です。
【前提条件】 年間売上:2,000万円 年間経費(材料費・家賃・水道光熱費・広告費など):800万円想定 所得(売上−経費)=1,200万円 開業時融資:500万円借入、返済期間5年(60回払い)、金利2%想定 消費税:課税事業者(売上1,000万円超のため) |
この条件で、「支出項目ごとの目安」を整理すると、以下のようになります。
支出シミュレーション
支出項目 | 発生タイミング | 支出目安(年間) | 備考 |
融資返済 | 融資実行翌月から | 約106万円/年(約8.8万円/月) | 500万円借入・5年返済・年利2%換算 |
所得税 | 2年目3月の確定申告後 | 約90万円〜150万円 | 所得税率20%超想定(控除前提で幅あり) |
住民税 | 2年目6月以降 | 約60万円〜70万円 | 所得の10%前後が目安 |
個人事業税 | 2年目8月以降 | 約30万円〜40万円 | 美容業は税率5%、控除後の所得に課税 |
消費税 | 3年目から発生 | 約100万円〜150万円 | 売上2,000万円の場合、概算10%−仕入税額控除後 |
融資返済+税金=約400万〜500万円/年
つまり、売上2,000万円でも、年間約4分の1近くが「税金+融資返済」で支出に消えていく計算になります!
融資は原則として融資実行月の翌月から返済スタート。一方、所得税・住民税・事業税の税金は2年目以降からまとめて請求が始まり、さらに3年目からは消費税納付も始まります。
最初の1〜2年で「利益が出ているから」といって使いすぎてしまうと、後から支払いに追われることになります。
💡アドバイス: 融資を受ける際は、「月々の返済額+将来の税金支払い」を見越して、事前にキャッシュフロー表を作ることが重要です。税理士や金融機関に相談して、余裕ある資金設計をしておきましょう。
美容室経営者が陥りやすい税金トラブルとその回避策
美容室を開業したばかりの経営者が意外と多く直面するのが、税金による資金トラブルです。税金の支払いは「後からまとめてやってくる」ものが多く、特に2年目以降に重なると、資金が足りず延滞や倒産に至るケースも少なくありません。
ここでは、実際によくある税金トラブルとその回避策を紹介します。
トラブル事例 | 原因 | 回避策 |
税額が想像以上に多くて払えず、延滞金が発生 | 確定申告まで税額を把握していなかった | 年間売上の30%を税金用に積立/会計ソフトで利益を見える化 |
消費税がかかるのに納税していなかった | 年間売上1,000万円を超えていたのに未確認 | 年間売上900万円を超えたら税理士に相談/課税事業者かどうか確認 |
住民税・個人事業税の請求書を放置していた | 税務スケジュールを把握していなかった | 開業初期に「納税カレンダー」を作成し、月ごとに確認 |
特に怖いのが、「払うお金がない」状態で納税時期を迎えてしまうこと。最悪の場合、税金が払えずに廃業や倒産に追い込まれるケースもあります。
💡ポイント:
開業初期こそ、「税金は後で来る」を意識し、資金管理と情報収集を徹底することが最大のリスク回避策になります。税理士への早めの相談や、クラウド会計ソフトの導入も効果的です。
専門家に頼るべき?税理士の必要性と費用感
美容室を開業したばかりの頃は、「できるだけお金をかけたくない」と、経理や確定申告を自分で対応しようとする人が多いです。確かにスタート時はそれも一つの選択ですが、売上が増えて税金が複雑化してくる2年目以降は注意が必要。自己判断で間違った申告をしてしまうと、延滞税や追徴課税が発生し、最悪の場合資金繰りが悪化→倒産というケースも実際にあります。
以下に当てはまる方は、早めに税理士に相談するのが得策です。
🔹 税理士をつけたほうがいい人
- 青色申告に不安がある
- 年間売上が500万円以上ある
- 住民税・個人事業税・消費税などが重なってきた
- 将来的に法人化や店舗拡大を視野に入れている
税理士をつけることで、節税のアドバイスや税金の予測が立てられるので、無駄な支出や納税トラブルを未然に防ぐことができます。
🔸 税理士費用の目安
契約スタイル | 相場費用 |
スポット申告代行 | 3万〜8万円/年 |
顧問契約(月額対応) | 1万〜3万円/月 |
💡「税理士に頼むなんてもったいない」と思うかもしれませんが、無知による納税ミスのほうが高くつくことも。将来の安心と経営安定のためにも、税理士の活用を前向きに検討してみてください。
まとめ|税金は“経営の義務”。知らずに損しない知識を身につけよう
美容室の経営は「技術力」や「接客」だけでは成り立ちません。税金という“見えないコスト”をいかに計画的に管理できるかが、長く続けられるかどうかの分かれ道です。
この記事で紹介した内容を踏まえ、
- 開業前にスケジュールを立てる
- 開業後は税金積立を習慣にする
- 必要に応じて専門家に頼る
この3つを実践するだけでも、経営の安定度はぐっと高まります。
税金を知ることは、美容室経営を守る「自己防衛」です。準備ある者だけが、ピンチをチャンスに変えられます。
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