近年、美容師が個人事業主として独立し、自由に働くスタイルが注目されています。開業届を提出するだけで始められ、雇用に縛られず自分のペースで働けるのが魅力です。
一方で、売上管理や集客、税務などの知識も求められるため、自己管理力が必要です。この記事では、美容師が個人事業主になるための手続きや働き方の種類、インボイス制度への対応、年収のリアルまでわかりやすく解説します。

美容師が個人事業主として働くとは?その基本を理解しましょう
美容師が個人事業主として活動するとは、法人を設立せずに、自分の名義で事業を営むことを指します。つまり、美容師の個人事業主は会社に属さず、独立した形で美容サービスを提供している状態です。
税務署に「開業届」を提出することで、個人事業主としてのスタートが切れます。フリーランスの美容師も、こちらの個人事業主の枠組みに含まれ、自由な働き方が可能です。
開業届について知りたい方は▶︎【2025年完全版】フリーランス美容師の開業届マニュアル|提出タイミング・記入例・節税まで解説
美容師がフリーランスとして個人事業主になるメリットとは?
美容師がフリーランスで働く場合、好きな場所で、好きな時間に働ける自由度の高さが魅力です。特定の美容室に縛られず、自分のペースで施術やスケジュール調整ができます。さらに、シェアサロンや業務委託契約など、初期費用を抑えた形態で、個人事業主としてスタートすることも可能です。こちらによって、リスクを抑えながら独立できます。
自由な時間管理ができる反面、経営スキルも必要である
自由な働き方の一方で、美容師が個人事業主として成功するには、技術だけでなく、経営や集客の知識も欠かせません。自分でスケジュールを管理して、お客様の予約対応や売上管理をこなす必要があります。
マネジメント力や営業力が求められるので、挑戦意欲の高い方に向いている働き方と言えます。
美容師の個人事業主に向いている人の特徴
美容師の個人事業主として自立する際、どのような人が適しているのでしょうか?以下の特徴に当てはまる方は、こちらの働き方に向いています。
- 積極的に新しいことにチャレンジできる
- 人とのコミュニケーションを自発的に取れる
- 自己管理能力が高く、スケジュール管理ができる
- 税金やお金の仕組みを学ぶ意欲がある
個人事業主は、自ら動き、成長し続けることが重要なポイントです。独立後は経営者としての役割も担うので、責任感と向上心が求められます。
美容師の個人事業主に向いていないタイプ
以下の様な方は、個人事業主として働くことが難しい場合があります。
- 安定した給与収入を重視している
- 困難や変化に対して挑戦する意欲が乏しい
- 自己管理が苦手でスケジュールや金銭管理ができない
- SNSやネット集客に消極的
個人事業主は収入が安定しにくく、特にSNSなどを活用した集客力が欠かせません。これらに抵抗がある方は、雇用される働き方の方が向いているでしょう。
美容師が個人事業主になる際に必要な手続きと準備
美容師が個人事業主として働き始めるには、各種手続きを確実に進める必要があります。スケジュールを組んで、余裕をもって準備を行うことが成功のカギです。
開業届と青色申告承認申請書の提出
まず最初に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署に提出します。開業日から1ヶ月以内の提出が必須です。
また、青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう。青色申告は白色申告より節税効果が高いので、美容師 の個人事業主にはおすすめの申告方法です。
【青色申告のメリット】
- 最大65万円の所得控除が受けられる
- 赤字を3年間繰り越せる
- 事業用の家賃や光熱費の一部を経費にできる
青色申告とおすすめ会計ソフトの使い方はこちら▶︎【2025年版】美容師の青色申告と会計ソフト比較|フリーランスの確定申告をやさしく解説!
国民健康保険・国民年金の手続き
会社員を辞めて、美容師の個人事業主になる場合、健康保険は「国民健康保険」に切り替えます。退職後14日以内に市区町村役場で手続きを済ませましょう。用意する書類は以下の通りです。
- 健康保険資格喪失証明書または退職証明書
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証など)
また、厚生年金に入っていなければ、国民年金への加入も同じく、14日以内に行います。年金手帳や基礎年金番号通知書を持参しましょう。
美容国保と国保の違いを知りたい方はこちら▶︎美容師の国保3パターン比較!東京美容国保・市区町村・社保どれが最適?
美容所登録と開設届
店舗を構えて美容師の個人事業主として営業する場合は、保健所に「開設届」を提出して、「美容所登録」を受ける必要があります。建物の構造や設備が、保健所の基準を満たしているか検査を受けて、合格しなければなりません。
節税対策が美容師の個人事業主には不可欠である
美容師が個人事業主になると、給与の天引きではなく、自分で所得に応じた税金を納める必要があります。所得税は所得が増えるほど、納税額も増加するので、節税対策が重要です。
経費計上で課税負担を軽減する
個人事業主は、事業に必要な支出を「経費」として売上から差し引けます。主な経費例は以下の通りです。
- 消耗品(シャンプーやカラー剤など)
- 交通費
- 接待交際費(食事を伴う打ち合わせなど)
- 研修費(セミナー参加費など)
- 宣伝広告費(チラシ制作費用など)
- 図書費(お客様用の雑誌など)
経費にできる項目をチェックしたい方はこちら▶︎【保存版】フリーランス美容師の経費一覧|節税と申告の全知識2025
青色申告での追加メリット
青色申告にすると、白色申告よりも多くの経費を認められ、税務面での優遇措置が受けられます。帳簿付けは複式簿記が基本で、手間は増えますが、それに見合った節税メリットが得られます。
美容師の個人事業主の働き方の種類を理解しましょう
美容師の個人事業主として独立した後の働き方は、主に4つあります。各スタイルによって自由度やリスク、収入構造が変わるので、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。
1. 業務委託契約で働く方法
業務委託は、美容室と業務委託契約を結び、施術のみを請け負うスタイルです。集客や顧客管理は美容室側が行うので、美容師の個人事業主は施術に集中できます。初期費用が不要でリスクが低いのが魅力です。報酬は売上の40~60%が一般的ですが、労災や休業補償がない点は、デメリットになります。
2. 面貸しでセット面を借りる
面貸しとは、美容室のセット面を時間単位や月単位で借りて、自分の顧客を施術する方法です。集客は美容師の個人事業主自身が行い、店舗運営の負担は少ないですが、売上に応じて店舗に利用料を支払います。固定料金や売上連動型の契約があります。
3. シェアサロンを利用する
シェアサロンは、複数の美容師の個人事業主が、スペースや設備を共有しながら営業する形態です。光熱費や家賃などのコストを分担できるので、店舗の単独運営より、費用の負担が軽減されます。集客は個人で行うことが多いですが、サポート体制があるサロンも存在しています。
4. 自分の店舗を開業する
美容師の個人事業主として最も自由度が高いのが、自分で美容室を開業する方法です。自分のブランドを確立して、経営者として全てを管理します。初期費用や運営コストは高額になりやすく、集客・経営のスキルが強く求められます。
インボイス制度導入による業務委託美容師への影響
2023年10月から段階的に導入が始まったインボイス制度は、美容師の個人事業主の働き方にも大きな影響を与えています。
特に業務委託契約で働く美容師にとっては、適格請求書発行事業者(いわゆる「インボイス発行事業者」)として登録しなければならない可能性が高まっています。
こちらの制度は、消費税の仕入税額控除の適用を受けるために、取引先に正確な請求書を発行することを義務づけるものです。
また、美容室が業務委託契約を結ぶ美容師からサービスを受ける場合、支払った報酬に対して消費税の控除を受けるには、適格請求書が必要になります。
もし、美容師の個人事業主が免税事業者のままであれば、適格請求書を発行できず、結果的に美容室側は仕入税額控除を受けられません。これにより、美容室は負担増となり、業務委託契約の見直しや、条件の変更を求められるリスクがあります。
そのため、多くの美容師の個人事業主は、免税事業者から課税事業者へと転換して、適格請求書発行事業者として登録する必要に迫られています。
こちらに伴って、消費税の納税義務が発生して、税務申告の負担が増加します。これまでは売上が1,000万円未満であれば、消費税の納税義務が免除されていましたが、インボイス制度により、適格請求書を発行しなければ、契約の継続が困難になるので、実質的に消費税の納税義務を負うケースが増えるのです。
課税事業者になることのメリットは、取引先からの信頼を維持して、契約を継続できる可能性が高まる点です。一方でデメリットとしては、消費税納税のための資金繰りや、申告手続きの複雑さ、会計処理の負担増が挙げられます。
また、消費税分を価格に転嫁できない場合は、実質的な収入減につながる恐れもあります。
こうした背景から、美容師の個人事業主は、インボイス制度の導入に伴い、税務面だけでなく、契約面でも戦略的な対応が必要になっています。税理士や専門家と相談して、適格請求書発行事業者への登録準備を進めるとともに、経営面での計画を見直すことが求められます。
まとめると、インボイス制度の導入は、美容師の個人事業主、特に業務委託で働く方にとって、避けて通れない課題です。適切な準備と対応を行うことで、制度変更による不利益を最小限に抑えて、安定した経営を続けることが可能となります。
美容師のためのインボイス制度の基本はこちら▶︎美容師が知っておくべきインボイス制度とは?仕組みや対応方法を徹底解説
美容師の個人事業主の年収の目安と正社員との比較
美容師の個人事業主の年収は、勤務形態や働き方によって大きく異なります。一般的に美容師の平均年収は約300万円前後といわれていますが、個人事業主として働く美容師の場合は100万円から500万円以上と幅広いレンジに広がっています。
こちらは、美容師の個人事業主が自身の働く時間や顧客数、営業努力によって、収入を大きく左右されるためです。
また、正社員の美容師は、基本的に固定給や月給制で安定した収入を得られる反面、勤務時間やシフトが決まっており、残業や休日出勤も発生しがちです。
売上に対する歩合給がつく場合もありますが、全体的に安定志向の働き方と言えます。一方で、美容師の個人事業主は、自由な時間設定や休暇が可能な反面、収入は完全に自身の努力や集客力に依存し、不安定になりやすい点が特徴です。
そして、個人事業主は、業務委託や面貸し、シェアサロン、自身で店舗を構えるなど多様な働き方があり、それぞれの年収の目安も変動します。
総じて言えるのは、美容師の個人事業主は、自分の技術力だけでなく、営業力や経営感覚が年収を大きく左右する働き方だということです。
正社員は安定した収入と社会保障が魅力ですが、自由度や収入上限に制限があります。独立して美容師の個人事業主として働く場合は、収入アップを狙うために、継続的なスキルアップと経営力強化が不可欠になります。
まとめ
美容師の個人事業主として働くことは、自由な働き方を実現できる反面、経営者としての自覚とスキルが不可欠です。技術面だけでなく、集客や税務、経費管理にも積極的に取り組む必要があります。
手続きや制度の理解を深めて、働き方の選択肢を見極めることで、安定した収入と充実した美容師ライフを実現しましょう。特にインボイス制度や青色申告の活用は、今後の経営に大きな影響を及ぼすので、早めの対応が望まれます。
